日経新聞によると、料理宅配大手の出前館(2484)は19日、株主優待制度を廃止すると発表した。新型コロナウイルス下で料理宅配市場の競争が激化するなか、利用者や配達員の確保など事業投資へ集中することを踏まえた。2021年8月期の期末配当は未定だが、中長期では配当による利益還元を実施する方針だ。

これまでは100株以上を持つ株主に年に2回、3,000円から6,000円分の「出前館」で利用できる優待券を贈っていた出前館は、巣ごもり需要が高まる昨今、お得に宅配してもらえるという理由で優待目的の投資家に人気を博していた企業です。
コロナ禍によって先行きが不透明だった昨年は、同社の株価も4,000円を超えるまで上昇しました。しかしそこがピークとなり今年に入ると一転、コロナワクチンの広まりによって、株価が見事なまでの右肩下がりに縮小していく様子が伺えます。

そもそも出前館の事業は、その名の通り『出前』というオールドエコノミーであり、収益性はお世辞にも良いとは言い切れませんでした。
たしかにコロナの影響で需要が高まり、売上は過去最高とも言えるほど上昇していますが、それに比例して営業赤字が増加しているのです。
それもそのはず、出前館は本業の配達事業で人員不足になるほどの盛況ぶりにより、新たに大幅な人員確保に動いたり、今のチャンスに乗じるためのCMなどの広告費に多額の投資をしたりしたことで、販売費及び一般管理費の金額が前年と比べても著しく上昇しているのである。
そんな状況で、企業の財政を圧迫するだけの株主優待という制度をキープするだけの余裕もなく、この発表がされる前から株主優待が廃止になるのは時間の問題だと見られていたわけです。
しかし今回の株主優待の廃止に失望した投資家は多かったようで、時間外で▲10%を超える株価の下落が起きるなど、優待目当ての株式投資家には寝耳に水だったようです。

私は常に株主優待という制度は廃止すべきだと考えておりますが、日本株に投資している日本人は株主優待制度が大好きという人が多いですよね。
しかし、今回の出前館の例のように、本業で稼ぐことができていない企業にとって、株主優待は費用を増やしてしまうだけで、負担にしかなりません。
株主にとっても、経営者目線であっても、事業が苦しい時はカットできるコストはことごとくカットするのが当たり前の発想だと思いますので、真っ先に切られる可能性があるのが株主優待というものです。
ですので、いかにお得に見える株主優待であっても、優待目当てだけで株を保有し続けるのはかなり危険な投資方法なのかなと思います。
優待目当ての投資家は、サマリー情報すらあまり見ない人が多いです。例えば昨日の終値で3,000円程度の優待目当てで、買ってしまった個人投資家は、優待の廃止を受けて、結果的にPTSで1単元16,000円を超える損失を抱えてしまうことになったわけです。
株主優待が欲しくて日本株に投資をしている人も少なくはないと思いますが、個別株に投資をするのであれば最低限、四半期報告書ぐらいは目を通しておいたほうが賢明かと思われます。
それすらも面倒だというのであれば、素直に米国株の指数に連動するインデックス投資に全力で投資し続けた方が、よほど良いリターンが得られるのではないでしょうか。