全国労働組合総連合(全労連)は31日、生活に必要な経費を調査し、それを賄える最低賃金の試算を公表した。コロナで影響を受けた非正規社員らの多くが、ほぼ最賃で働いていることも念頭に、最賃は「全国一律で時給1,500円が必要」と訴えました。

全労連によると、一人暮らしの25歳の若者は水戸、長野、岡山、那覇の4市で2020年、いずれも税・社会保険料込みで月25万円前後必要だったということで、これを月平均の法定労働時間173・8時間で割ると、時給1,400円以上となる。お盆や年末年始に休みがとれることを前提にし、月の労働時間を150時間と設定すると、時給1,600円以上になる。この試算を受けて、全労連は1,500円以上が必要だという試算を弾き出しました。
地方は大都市に比べて住居費は低いが、生活の足である自動車などにかかる交通費は上回る傾向にある。食費などは地方の方が安いように見られているが、実際には全国チェーンの店舗展開によってそれほど大きな差がないと見ているようで、全労連は『全国一律』であることが重要だと考えているようだ。
しかし実際には、今は最低賃金は現状で東京1,013円、沖縄792円などとかなりの差があり、全国一律1,500円を実現するには、沖縄は時給を倍近く上げなければならないことになります。
さらにもしも実現することができたとしても、時給1,500円の世界では皆が幸せになれるかというとそうでもありません。
これは隣国・韓国の現状を見ればよくわかるでしょう。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の経済政策の目玉として期待されていたのが、最低賃金の上昇でした。文大統領はこの政策を無理やり押し進めた結果、韓国のGDPは確かに上昇したようです。しかし、同時に15~29歳の若年層の失業率が高止まりしているというのが現状です。
最低賃金の上昇によって、韓国では中小企業を中心に企業の経営体力が低下し、雇用が減少したという現実があります。企業が労働コストの上昇に対応するためには、どうしても新規の採用を抑えなければならないことになり、元々体力で劣る中小企業は最低賃金が高い新規雇用を生み出すことができなくなってしまいました。
日本でも企業の99%以上は中小企業と言われており、最低賃金1,500円を実現すればこれらの企業が雇用を生み出すことがかなり厳しくなると思われます。
結果的に中小企業の倒産が続くことになり、失業率がかなり高くなってしまう可能性が高いと思われます。
また、最低時給が上がればその分大きくインフレが進む可能性もありますし、扶養の範囲で働くパートさんなどは、時給が上がれば働く時間が短くなり、結果的に企業の人員不足が進む可能性もあります。
今でも高単価の中年社員をクビにする方針が進んでいる各企業ですが、これからはさらに人件費に悩まされることになるでしょう。
正社員であってもクビを切れるようにするなどをしなければ、柔軟に雇用を生み出すことはできないだろうと思います。
『なんとなく最低賃金をアップしました』という愚かな政策は避けなければならないでしょう。まあ、まだまだ実現には程遠いと思いますが、最低賃金の引き上げには大きな問題が山積みであることを理解しなければなりませんね。