流通大手のイオンは、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎながらスーパーなどで働く負担に報いるためとして、国内外のおよそ45万人の従業員に、1万円から2万円の一時金を支給することを決めたとのことです。

対象は、国内外のグループ企業のスーパーや専門店、それに配送の現場で働く社員やパートのおよそ45万人で、支給総額はおよそ60億円に上る見込みだと言うことです。
日本でもトップクラスの小売業者であるイオンがこのような大盤振る舞いをするのですから、さぞかしイオンは儲かっているんでしょう・・・
いえいえ。決してそんなことはありません。今月上旬に発表された、イオングループの2021年2月期の連結決算によると、純損益が710億円の赤字(前期は268億円の黒字)に転落したということです。さらに、赤字はリーマン・ショックで消費が冷え込んだ09年2月期の27億円以来12年ぶりで、赤字額は上場後で過去最大となったとのこと。決して台所事情が良いというわけではないのです。
それでもイオンはコロナと闘って日々現場で働く従業員に報いるために、一時金を支払うことを決定したのですから、ある意味素晴らしい決断だと思います。
イオンは全国に店舗を展開しており、イオンが建つとその地域の小規模小売店が軒並み廃業に追い込まれるというほどの凄まじい勢いを持っています。前年度の赤字もコロナによる消費控えが原因であり、本質的な稼ぐ力は小売業界としては高い方だと思います。
イオングループは、都心では少しお手頃な値段設定の小さなスーパーをコンビニのように展開しており、かたや地方では巨大なショッピングモールで地域住民の集客を一手に担うという真逆のような戦法を取っています。
そうすることで、都心では少しお手頃な価格で日用品が手に入るコンビニ感覚の普段使いができるということで人気が出ますし、地方では顧客にイオンモール以外の選択肢を与えないことで独占状態に持っていくのです。
ただ、指標で見るとイオンは営業利益率などが1%に満たないなど、めちゃくちゃ低いので投資先として選ぶには少し勇気のいる企業ではあるのですが、あらゆる企業を飲み込みながら巨大化してきたイオングループは、従業員の士気を高めるために何十億円という支出を容認できるほどの巨大優良企業となったということが分かりますね。
ただ、従業員に一度給付金を支給すると「毎月支給しろー!」と叫ぶ乞食が出てこないかは心配ですが、イオンの決断は従業員の士気を高めるという意味では素晴らしい決断だなと思いました。
60億円くらいで士気が上がって、サービスが向上し、近いうちに再び黒字化となれば、数百億円のプラスになるわけですから、イオンにとっては割りの良い投資なのではないでしょうか。
イオングループはアフターコロナの世界でも大きな影響力を持った企業であり続けられそうです。