ビジネスインサイダーに掲載されていた記事に、興味深いものがありました。

イノベーションを生み出して億万長者になった人の中にも、中には転落してしまう人もいるという事です。2019年に億万長者グループから脱落した人の数は、2010年の10倍にまで増加したようです。
米国内でも、億万長者と呼ばれるほどの資産家になるのは難しくなってきているようですが、そればかりか、億万長者であり続けるのが厳しいという状況のようです。UBSとPwCによるレポート曰く、2009年に少なくとも20億ドル(約2,100億円)の財産があった70人以上が、2020年までにもう億万長者ではなくなっているという。
割合で表すと、億万長者のうち2019年には1.7%が脱落したという事で、この脱落した億万長者にはある共通点があったという事です。それは、脱落者のほとんどが、全財産を1つの企業に投資しており、その企業が厳しい状況に陥ったのだという事です。
20億ドル単位の資産に影響を与えるという事ですから、ほとんどが米国でベンチャー企業を立ち上げた創業者という事でしょう。始めのうちは事業が成功して資産が拡大したにも関わらず、事業自体の雲行きが怪しくなり、資産価値が減少してしまったのだと推測されます。
UBSのグローバル・ウェルス・マネジメントのジョセフ・スタドラー氏と、PwCのマーセル・チャンズ氏が、「我々の分析は、事業と資産の多角化が富を維持する鍵であることを示している」と主張するように、資産をキープしている億万長者ほど、事業を多角化し、資産を分散投資していることが分かります。彼らのレポートによれば、億万長者の半数近くが純資産の21%から40%を不動産で所持しているとも言っており、資産家であり続けるためには、様々なアセットに投資をし続けることが必要不可欠であることを表しています。
また、彼らのような世界を変えたイノベーターでさえも、自分の事業に集中投資して、その事業が上手く回らなくなったときには、資産が大きく毀損する訳ですから、一度の成功で安心して立ち止まることはダメだということがよく分かります。
今や世界一のECサイトと言える、アマゾン・ドット・コム(AMZN)ですが、数年前までは赤字続きの企業でした。ネット通販の小売業という形式上、それほど高収益は期待できないというのは仕方ないところでしたが、『AWS』を始め、クラウドサービスに注力し始めてから、黒字体質に変化することができました。
アマゾンだけではなく、『GAFAM』と呼ばれる、米国を牽引してきた巨大ハイテク企業各社も、本業とは別に他の収益の柱を作り出すことに力を入れており、大企業となった今も日々邁進しています。だからこそ、GAFAMブームは単なる投資ブームとしてではなく、莫大な成長率を背景に、株高が容認される状態が続いていたのだと思います。
我々投資家と、起業家として自社株を上場にまで持っていった実業家では違いもあるでしょうが、やはり一つの事業に集中投資をしすぎることはかなりリスクの高いことだと言えるのでしょう。
事業の多角化をすれば成功するというわけでもなく、多角化したことで大きく価値を毀損した企業があるのも確かです。ですから、多角化に積極的な企業を買えば成功するということもありません。
しかし、一企業集中投資や1セクター集中投資は当たった時は大きい分、外れればそれほど大きなリターンを得ることはできません。今は盛り上がっている小型ハイテク企業への投資ですが、これから先も同じように大きなリターンを得ることができるかどうかは分かりません。
今後もハイテクは成長をするだろうと思いますが、投資家の高すぎる期待には応えられない可能性もあるからです。期待値が高過ぎて高止まりしているハイテク株だけを買ってホールドしているというのは、かなりのリスクをとっていることを理解した上で投資するのがベストだと言えるでしょう。
分散投資をするのであれば、投資先は少なくとも複数のセクターの全く違う事業で、かつ、それらの事業がその業界のシェアのトップであれば尚良いでしょう。
我々はあくまで個人投資家であり、実業家ではありません。一つの有望株に集中投資して、その企業のCEOと運命共同体になる必要はありません。素晴らしいCEOと素晴らしい事業は米国内にもたくさんありますから、それらの素晴らしい事業を複数組み込んだポートフォリオを組むことで、リスクとリターンのバランスを取るのが適切な投資方法だと言えるのではないでしょうか。