大手電機メーカーのシャープの子会社が総額で最大100億円の架空の売り上げを計上していた可能性があるという報道がありました。
シャープの連結子会社でスマートフォン用カメラのレンズを手掛けるカンタツ(東京)で不正な会計処理の疑いが見つかったとのことです。期間は昨年4月から今年の1月にかけてであり、内部監査の結果、製品の出荷などをしていないにもかかわらず、売り上げを計上していたということが分かりました。業績への影響はこれから調査していくということです。
シャープの規模であれば、100億円の売上計上というのは影響は軽微と言えるかもしれません。(子会社のカンタツにとっては大きな金額なのでしょうが)
ただ、このような基本的な不正会計に手を出すという時点で、投資家心理を冷やす要因となり、株を手放す理由としては十分と言えるかもしれません。
不正会計に手を出すということは、本業だけではどうしようもないから、粉飾しないとヤバい状況にあると本人が主張しているようなものですから、数ある不正の中でも、投資家としては株を手放すべきアラートと言えるのではないかと思います。
一つ評価ができる点は、この不正が内部監査の結果、明るみになったということです。内部監査は、社内にある部署の一つで、社内で不正が起きていないか監視するという役割を担っています。企業によっては、内部監査とは名ばかりで、社長などの言いなりになっていたり、同じ社員だからといって、なあなあになっていたりということで、ほぼ機能していないというケースもあるのですが、少なくともシャープでは内部監査は最低限の機能を果たしているようです。
しかし、架空計上などというのは、必ずバレます。売上を無理やり100億円計上したことによる影響は必ず何処かに出てくることになります。具体的には、貸借対照表(B/S)に売掛金という形で計上される事となるでしょう。連結会社間での架空計上であれば、業績には影響を与えないかもしれませんが、売掛金だけという債権だけ計上して、相手先の債務が増えていないとすぐに差異があることがバレてしまうので、おそらく内部取引ではないだろうと推測されます。
関係会社間で口裏を合わせて不正に取り組んでいたなら、内部取引間での架空計上もあり得ない話とは言えませんが、子会社間の内部取引で架空計上をすることのメリットはほとんど無いですからね。
まあ何にせよ、不正会計は重大なコンプラ違反であり、内部監査で明るみになったというプラスがあったとしても、株を手放す理由としては十分すぎるほどの要因です。
連結決算で架空売上が計上された数字が開示されていたのであれば、それは投資家に対する裏切り行為であり、企業のオーナーたる株主を騙すというあるまじき行為です。カンタツの経理部門の責任者だけでなく、指示をした役員も含め、関係者全員が懲戒解雇となっても文句が言えない案件だと言えるでしょう。
日本を代表する企業であったシャープですら、台湾企業の傘下となる時代ですから、日本が誇る製造業がかなりの苦戦を強いられているのも事実です。昨年の4月から今年の1月にかけて、というコロナの影響など何の関係もない時期に起きた不正だというのもまた闇が深いですね。
シャープは直ちに調査委員会を設置して「カンタツ」に対する調査を始めるとのことですが、可及的速やかに昨季の業績への影響を発表すべきだと言えるでしょう。
シャープといえば、先月発表があったように、NTTドコモの『半官半民』化に伴う上場廃止により、代わりに日経平均株価225銘柄の一つに組み込まれることが決定しました。今月の2日から日経平均株価を構成する銘柄の一つに採用されたばかりでした。
名実ともに日本を代表する企業に舞い戻ってきたばかりのシャープがここにきて、信頼を失うようなニュースはかなり痛いと言えるのではないでしょうか。
シャープ株へ投資をしている投資家は一旦、持ち株を手放すことも想定しておいた方が良いのかもしれません。続報を待つ事としましょう。