日経ビジネスの記事によると、デフレの象徴となってきた100円ショップの店頭で、100円より高い商品が増え始めているとのことだ。

業界最大手のダイソーが、かなり前から100円『均一』ショップを諦めて高額商品の展開を進めていたが、コスト上昇が主な理由で、大手の一角を占めるワッツは「高額商品」を今後3割増やす方針だということです。
業界2位『セリア』の河合映治社長は「当社は100円を堅持する」と先月中旬の決算説明会でコメントをしていたが、業界3位のキャンドゥも含めて、100円ショップ業界のトッププレイヤーたちのほとんどが、100円『均一』であることを諦め、方向転換をしていることがわかりました。
この背景には、原料価格や輸送費の高騰があり、例として、現在販売価格100円で提供できる延長コードは、わずか30cm程度のものしか作れないという。30cmの延長コードにそれほどの需要が見込めないことは明らかであり、「100円でなくても2mのコードを用意する方がお客様にとってはよい」という経営判断になっているようだ。
また、原料や輸送費ではなく、人件費の高騰なども明らかに影響していると見受けられます。100円均一ショップで売られている製品のほとんどが、ベトナムなどのアジアの低賃金の国で製造されていましたが、例えばベトナムの過去10年間(2010年〜2019年)のインフレ率をみると、少なくとも毎年2〜3%ほどのインフレ率を見せている年がほとんどで、2010年時点の購買力を『100』とすると、2019年時点の購買力はおよそ『56』まで低下(インフレによる影響のみ考慮)しているのである。
つまり、ベトナムではインフレによって現金の価値が10年間でおよそ80%ほど低下したことになり、その影響で当然ベトナム人の人件費も高騰している計算になります。
「日本は30年ほどデフレが続いているから、投資するより現金を置いておいた方が良い」といまだに勘違いしている人がいます。しかし、コロナの影響で縮小したとは言え、グローバリズムの現代社会において、日本がデフレだろうが、他国では適切にインフレが続く限り、必ず日本のコストも上昇してしまう傾向にあるのは目に見えています。日本が30年間もデフレ続きだったのは、日本企業による企業努力もあったのでしょう。不景気続きの日本で暮らす国民は、過剰とも言える日本のサービスに対して見合わないほどの少額しかお金を払いたがらない貧乏人ばかりですからね。
しかし、着実にインフレの波は日本にも訪れています。セブンイレブンを筆頭に、コンビニでは『サイレント値上げ』なるワードがトレンド入りするなど、販売価格はそのままに、内容量を知らない間に下げるという手法をとられています。
この手口に批判をする人も多いですし、私も否定的で、価格を上げたらいいのにと思いますが、そうでもしないと同じ価格ではモノが提供できない。つまり日本人が気付いていないだけで、インフレは緩やかに進んでいるのです。
100円ショップだけでなく、最近では、100円で食べれる回転寿司なんかにも影響が及んでいます。100円寿司ではかつては100円で提供されていたネタは120円、200円と値上げされていたり、100円の皿でも明らかにネタのサイズが一回り小さくなっていたりするのです。これもコストの上昇による苦渋の選択、提供できるギリギリのラインを探る企業努力と言えるでしょう。
国際社会において、他国でインフレが進んでいるのにいつまでも日本がデフレというのは異常事態でもあったわけで、日本人の給料が上がらないのは、日本人の異常なまでのケチくささによる影響なのです。
企業も努力だけではどうしようもなくなってきているために、100円『均一』のショップというのはこれからもどんどん無くなっていく方向にあるだろうと思います。日本でもすでに適正とは言えないまでも、非常に緩やかなインフレが進んでいるのは紛れもない事実です。
インフレが進むというのは成長の証です。世界中の経済は上手い具合に新陳代謝を繰り返し、日々成長を続けているのです。株式投資で長期的にはインフレを超えるリターンを得られるのは、10年前よりも現在の方が、そして現在よりも10年後の方が経済的に成長を続けてきたからだとも言えるでしょう。その上で、果敢にリスクをとって投資をしてきた投資家たちがインフレよりも大きなリターンを得られる機会があるのは当然とも言えます。
つまり、日本人も今までのように『貯金だけしていれば良いや』なんて甘い考えをしていると、20年後、30年後には、100円ショップで満足に買い物もできず、回転寿司ではミニチュアのようなお寿司しか食べられず、コンビニでおにぎり一つも簡単には買えなくなるかもしれません。
そんな未来を迎えたくないというのであれば、今すぐにでも投資を始めて、将来のインフレに備えた資産形成を考えるのが適切な行動だと言えるのではないでしょうか。