ビジネスインサイダーに掲載されていた記事によりますと、S&P500指数の物価調整後の株価収益率(CAPE比率)が今月7日に33.71に達し、これまでの平均値16.72の2倍になったということだ。

このCAPE比率(CAPEレシオ)とは、ノーベル経済学賞を受賞した米国のロバート・シラー氏が考案したPER(株価収益率)の一種で、過去10年間の実績利益に、同期間の物価上昇率を加味して計算される数値であり、株価の割高・割安の水準を測る指標となっています。
CAPEレシオは過去10年間の平均という指標を使用するため、単年度での一時的な要因や、景気循環などに左右されず、実質的な株の割高・割安の基準が測れるということで注目されている指標となります。
一般的にはこの数値が25を超えると『割高』と判断されると言われており、それは言い換えると、株式の適性なリターンはインフレ調整後で4%程度が適正と言えるということなのかもしれません。
このCAPEレシオが33.71という水準まで上昇するのは、2000年のITバブル以来だということで、1929年の世界恐慌の直前の数値も上回っているということです。
S&P500指数という株価指数の割高感までかなり上昇している現状、我々個人投資家も警戒心は持っておいて損はないと思います。ただ、この指数が割高感を示しているからと言って、投資を控えた方が良いかと言われると、決してそうでもないと言えるでしょう。
ドイツ銀行のストラテジスト、ジム・リード氏は、CAPE比率は通常、株価が割高か割安かを測るために使用されているものの、割り引いて考えたほうがいいと主張しています。なぜなら、このCAPEレシオは、2008年の金融危機時の10カ月間を除けば、この指標は1991年初頭からずっと平均の16.72をを上回っているからだということです。
さらに言えば、『割高』を表すCAPEレシオ25というのも、過去5年間の月単位の推移を見てみると、ほとんど25を割ることがなく、今年の3月末にコロナショックの大暴落から回復し始めていた頃でさえ、24.82をつけた他には、2016年の初頭に24台をつけたくらいで、ほとんど投資のチャンスがなかったことになります。
ハイテク企業の台頭によって、過去の平均よりも、各事業の成長速度が一昔前よりも早まっているのは確実です。そのため、株価の上昇も、実績以上に評価されがちになり、過去平均のPERよりも、直近10年くらいのPERは割高だと判定されるケースが多くなっています。
ですので、割高感を気にしすぎて追加投資を拒んでいては、過去5年間で見ても、わずか数回しか投資のチャンスがなかったことになります。そのため、無闇に恐れすぎて投資できないというのは、機会損失以外の何物でもありません。
反面、現在の株高は実体経済を置いてけぼりにしているのは誰が見ても明らかであり、誰もが割高だろうと思いながらも株高のトレンドに乗っかっている状況です。
特に、今年の2月から3月の間に、過去にも類を見ないほどのスピードで株価が調整をしたことで、一旦の調整がすでに完了したと楽観的に見る市場参加者も増えています。コロナは第二波、第三波がきていますが、株式市場には第二波が来ると騒がれていた割には、ハッキリと来たのかどうかもよく分からない状態です。
現在はむしろ株高に浮かれている人の方が多いでしょうから、気持ちを引き締めるべき時なのかもしれません。ただ、これらのデータが割高感を示しているからと言って、投資をしない原因を突きつけるのもどうかと思います。
我々個人投資家は自分自身が決めたルールに則って、これからもこれまで同様の投資を続けるのがベストなのだと思います。割高だと言われながらも過去数年にわたって株価が上昇してきたのは確かなことですから、投資をしないという選択肢は無いのです。
投資家として、現状把握を怠らず、常に冷静に、自分の資産のうち、どれだけの比率を投資商品に割り当てるのかをよく考えて、市場に残り続けることを最優先に考えていきましょう。