「損をしてしまうかもしれない」という考えから、株式を持たず、現金のみで資産管理している日本人は少なくありません。日本人のうち、株式や投資信託のような金融商品を保有している割合は、今でも1割ほどだと言われています。そしてそれは、経営者層であっても変わらないのかもしれません。

デロイトトーマツが作成した、『日米欧の社長CEO報酬水準比較』というレポートによれば、各国のCEOの役員報酬のうち、自社の株式が占める割合は、米国が7割、欧米各国が4割前後であるのに対して、日本は1割程度ということがわかりました。

また、日本の役員たちは、役員報酬として株式を取得してもすぐに売り払ってしまいますよね。弊社も役員報酬として一部を株式で支払っているのですが、ほとんどの役員は換金可能になれば、すぐに売り払っている様子です。私が入社するよりも前の話ですが、自社株の売却益で手に入れた腕時計やゴルフクラブなどの趣味の品を見せつける方も昔は居たそうです。ITベンチャーのダメな部分が滲み出た感じの方ですね。
それはさておき、世界的に見れば、CEOや役員クラスでは、報酬の大半を自社株で受け取るというのが『常識』なのですが、株式投資の意識が低い日本ではそれが非常識扱いになっています。海外では役員クラスだけでなく、従業員に対するストックオプションも日本より頻繁に発行されているようです。
しかし、それも仕方のないことかもしれません。日本人にストックオプションを付与しても、売却可能になればすぐに売り払ってしまうでしょうからね。と言うより、毎月の生活に困窮する人も出てくるかもしれません。もし、毎月の給与、例えば20万円のうち、4割の8万円が『将来、株式を取得する権利』で支払われて、現金支給が残りの12万円となれば、シンプルに生活できないと言う人も多いでしょう。さらに、日本企業は、長期にわたって成長し続けることができるかどうか、怪しい企業がたくさんあります。有名な大企業も右肩上がりに株価が成長しているかと言うとそうではありません。
だから、ストックオプションで報酬を受け取るよりも現金で受け取る方が一般的になっているのかもしれませんね。
しかし、ストックオプションで報酬を受け取ると言うことのメリットでもよく語られる話なのですが、自分がストックオプションを保有していると、単純にいえば、『会社の業績が上がるように頑張り』ます。会社の業績が上がれば株価が上がり、自分が権利行使した際に多くの売却益を得ることができるからです。
だからこそ、海外企業の方が成長性が高い企業が多いのかもしれません。CEOは自社株の株価が下落しないように必死なはずです。報酬の4割以上が株式として支払われているわけですからね。
しかし、その狙い通り、業績をよくするために全力で責務を果たし、株価を上昇させるCEOや従業員が海外にはたくさんいるから、業務効率がよく、業績も右肩上がりに成長し続けている企業が多いのかもしれません。
従業員も、株式を保有した時点で、株主の仲間入りですから、株主と同じくらい真剣に自社の利益をアップさせる方法を尽力するだろうと思います。
株式投資が世界の常識で、日本の非常識となっているのは、身近なはずの日本株に成長性がなく、投資冥利がないからです。
卵が先か、鶏が先かと言うような話になってしまいますが。日本でも給与に加えて、多少のストックオプションを従業員に付与してあげれば、日本の生産性、効率性はもっと上がるのではないだろうかと思います。
自社の株主になることで、自分が勤めている企業の一員となり、どうしたら業績が上がるのかと言うのを真剣に考えるかもしれませんん。日本の『非常識』をこれからは『常識』として上書きしていく必要がありそうですね。