コロナショックの影響により、高配当株投資家に大人気だった銘柄も軒並み減配や無配、増配ストップなどという笑えない状態に陥っております。
そんな中、米国株の高配当投資家にとっては大人気の『生活必需品』メーカーであるアルトリア(MO)が昨日、決算を発表しました。
決算内容としては、売上高が51.1億ドルのコンセンサス予想に対し、50.6億ドルと未達になるも、1株あたり利益(EPS)はコンセンサス予想1.07ドルに対して、1.09ドルと予想を上回る結果となり、それなりの内容となりました。
しかし今回注目なのはそこではなく、今回も無事にアルトリアが増配を発表してきたということです。
四半期配当を0.84ドルから0.86ドルへ増配。増配率にして2.4%と、寂しい増配率となってしまいましたが、今の状況を鑑みるに、増配ストップや減配・無配となっても文句は言えない状況だったため、少額でも増配を実施したということはビッグサプライズとなりました。
もちろんアルトリアの株価は上昇し、一時的には、増配率とほぼ同じ、前日比2%超の上昇となる場面がありました。

もちろん、今回の増配を手放しに喜ぶことができるような状況とは思いません。増配を発表したとは言え、四半期の1株あたり利益が1.09ドルに対して、配当金が0.86ドルです。
利益のおよそ8割を配当金として支払っているということですので、もし、コロナショックが収まった後でも大きな増配を期待することは厳しいと言えるでしょう。
しかし、この状況下において、増配を決行したということに米国企業としての意地を垣間見たような気がします。
タバコメーカーであるアルトリアの先行きは決して安泰というものではありません。若者を中心に喫煙率はどんどん低下しており、昨年の夏頃には、アルトリア傘下の『ジュール・ラブズ』が販売していたフレーバータバコによる10代の若者の重篤な健康被害が大きな話題となり、フレーバータバコの販売は禁止となり、アルトリアは同社株を減損するまでの事態に陥りました。

現在進行形で社会問題となっているコロナウイルスも、喫煙者のほうが重症化しやすいということや、テレワークの広まりで自宅で喫煙ができない、もしくは喫煙が必要なほどストレスが溜まらなくなったということで、禁煙を考える人々が増えたことも逆風となっています。
そんな逆風に押され気味な環境下において、予想を超えるEPSを稼ぎ出しただけでなく、増配まで発表したということに、大変な意義があると言えるでしょう。
米国企業が、本当によっぽどのことがない限り、減配、無配という手に出ることはありません。それをしてしまうと、経営者として失格の烙印を押されてしまうからです。
それに対して、例えば昨日決算発表があった日本企業の日産自動車(7201)は、今期(2021年3月期)の営業赤字額が4,700億円と前期の405億円から大きく拡大する見通しを明らかにし、さっさと年間配当の支払いを見送り、無配となったわけです。

まあ、大赤字になっているときに配当金を支払っている場合ではないという気持ちはわかりますが、日本企業の無配落ちの判断は、米国のそれとは違い、かなり軽く捉えられがちなように感じます。
もちろん、配当金を支払って業績が圧迫されるほど困窮しているなら話は別ですが、日本企業においては少し業績が悪化すれば、すぐに株主にその責任を押し付けているのが日本の今の企業なのです。
それもまた経営判断と言ってしまえばそれまでなんですが、株主として企業の一部を保有し続けると考えた場合、日本株と米国株のどちらに長期投資したほうがよさそうかは一目瞭然と言えるのではないでしょうか。
日本を代表する『タバコ株』のJTグループも連続増配が16年で途切れるなど、タバコ業界が減配することなどおかしなことではありません。そんな状態なのに、アルトリアは増配を発表してくれたのです。これは大変意味のあることではないでしょうか。
米国がこれからも株主第一主義を貫き、企業が力強い米国を体現し続けてくれている限り、米国の優良企業に投資するのがベストな投資戦略だと言えるのではないでしょうか。
私はタバコ銘柄に投資をすることはしませんが、タバコ株や米国企業の将来性は明るいものと信じております。今回の増配のニュースは、大きな意味を持つ素晴らしい決断だと私はそう感じました。