昨日の米国株市場も開始早々、売り優勢の状況が続き、NYダウ、S&P500、ナスダック総合指数と主要な指標は全てマイナス圏で取引が終了するなど、軟調な一日でした。
背景には、米中対立の激化が見られ、中国外務省が24日に四川省成都市にある米国の総領事館を閉鎖するように通知したと発表したことが嫌気された模様です。

中国との取引高が多いアップル(AAPL)や、ソフトウェアのマイクロソフト(MSFT)、決算内容とガイダンスが共に芳しくなく、叩き売られた半導体のインテル(INTC)など、NYダウ、S&P500、ナスダック総合指数の全てに採用されている大型ハイテク系企業がこぞって大幅安となったことが、米国株市場の軟調さを際立たせる結果となりました。
そんな中、単独で気を吐いた企業があります。それが米小売業大手のアマゾン・ドット・コム(AMZN)。前日には4営業日ぶりに株価が3,000ドル割れで取引を終了していました。
昨日も他の株と同様に大きく売られて始まりましたが、前日比で微増となり、再び3,000ドル以上をキープして取引を終えました。

株価が3,000ドルのアマゾン・ドット・コムですが、今現在のPERは143倍となっており、決算も来週に控えるなど、本来であれば警戒心が高まって投資すべきでは無い状況にあるのですが、他のハイテク企業と比べれば楽観視されているように思います。
まあ、アマゾン・ドット・コムは中国から撤退しましたし、米中対立が激化しても最も影響を受けない大手ハイテク企業だということで買われたのかもしれません。
ただし、4月末に発表された決算でジェフ・ベゾス氏が明らかにしたように、今四半期の見込み収益とされている40億ドルにも及ぶ金額をコロナウイルス対策に充てると宣言していたことから、今四半期の決算だけをEPSで評価するなら良い数字にはならないだろうと予測されます。
今回は売上高と、クラウドサービスの『AWS』の成長率で評価するのが妥当でしょうか。マイクロソフトの『Azure』の成長率が初めて50%を割ったことから、同様のサービスを展開するアマゾン・ドット・コムのクラウド部門の成長率は大変な注目を浴びるだろうと考えられます。
というように、EPSでは計り知れないのがアマゾン・ドット・コムという企業ですので、今のPER140倍超えというのも、『割高なのかどうか分からなくなってきた』というのが正直なところです。
現在、ノーリスク資産である米国債の10年利回りが0.58%です。それに対して、アマゾン・ドット・コムの利回りは、0.7%(1/143≒0.7%)ですので、ほぼ株式投資に対するリスクプレミアムは無いにせよ、バブルというほど割高でも無いのかな?と錯覚を起こすほど、そもそもの債券利回りが低下しているのが現状です。
コロナ対策のために市場に大金がばらまかれていることもあり、債券利回りはまだまだ低い水準で停滞することになるだろうと見られます。
そんな環境ですので、もしも10年債を買うぐらいなら、アマゾン・ドット・コムの株を10年間保有し続けた方が、多分リターンは大きくなるんだろうなと私は思います。
もちろん、今の水準が割安だとは言いません。利回りが1%を割っているわけですから、債券よりは利回りが良いと言っても、それほど大差があるわけではないですからね。
ただ、債券利回りがこれから先、しばらく上昇する可能性はかなり低いですが、アマゾン・ドット・コムがこれから先、しばらく成長し続ける可能性はそれなりにあると思います。
今から5年前のアマゾン・ドット・コム株は500ドル台前半でしたので、今のEPSから換算すればPER26倍と、他のハイテク企業と比較しても遜色ない程度の水準に落ち着きます。

まあ、今のEPSと5年前の株価から計算をすれば、アップルやマイクロソフトはどちらもPER10倍未満となりますし、アルファベット(GOOGL)もPER13倍ほどになりますから、アマゾン・ドット・コムは割高と言えるのかもしれませんが、過去5年間を振り返れば『MAGA』各社はそれだけ力強く成長してきたということが伺えるのではないでしょうか。
個人投資家として、さすがにアマゾン・ドット・コム株を一気に10株!なんていう投資をする気にはなれないですが、アマゾン・ドット・コムがこれからも期待通りの成長性を見せてくれるのであれば、今このタイミングからでも投資先として魅力的なのかもしれないと感じさせます。
少なくとも私は、『リスクを避けるために』米国債に資金を投じるくらいなら、いっそのことアマゾン・ドット・コムを買った方が、リターンが高まるのではないかと感じます。
まだまだ3,000ドル以上が定着したとは言い難く、決算を乗り越えれば調整が入るかもしれませんが、アマゾン・ドット・コム株は、超低金利な今の世の中では、超割高な株とは評価できないのかもしれませんね。