今月22日、内閣府が2012年12月から始まった景気拡大局面が後退に転じたことを正式に認定する見通しであることが分かりました。
アベノミクスによる景気拡大の頂点である「山」は2018年10月とするのが有力であり、この場合ですと、景気回復の期間は71ヶ月となり、戦後最長の景気回復期と呼ばれた「いざなみ景気」の73カ月には届かないことになる見込みだということです。
また、この景気回復期における経済成長率も平均で年1%台と過去の拡大局面と比較し、勢いが弱かったこともあり、ネット上では「そもそも景気拡大してなかった」や、「貧富の差が広まっただけ」、「下層民には関係のない話」などと言った声が聞こえております。
確かに日本人の『実質賃金』は着実に減少しており、2000年の実質賃金を『100』とした場合の実質賃金をグラフに表すと、景気回復が始まったとされる2012年あたりで『92前後』、景気回復中とされる2017年の時点では『88前後』と、ジリジリと減少しており、2000年と対比した場合では、1割以上も実質賃金が下がっていることがわかります。

これには、2000年頃の日本の異常とも言えるレベルのデフレが関係しているとも考えられます。2000年頃、確かに日本の物価は異常に安くなっており、『実質賃金』は今よりも高い水準でした。
デフレを象徴する出来事として、2000年の2月に日本マクドナルド(2702)がハンバーガーの販売価格を『平日半額65円』と設定したことからもよくわかるのではないでしょうか。平日限定とは言え、ハンバーガーが65円で食べられるという衝撃は、当時小学生だった私もマクドナルドに足繁く通うことになるほどの出来事でした。
その後、2001年に牛丼チェーンが牛丼1杯を280円、290円などという安売りを始め、コンビニでは80円のおにぎりが登場し、スーツの上下セットが1万円を切るという事態にも陥りました。
2001年3月には、日本政府が「日本経済は戦後初めてデフレ状態にある」と認めたことも当時は話題となり、名目賃金も今より高かった2000年から2001年当時は、相対的に『実質賃金』は今よりも相当高い水準だったと言えるでしょう。
その後、なんとか微増ながらインフレを達成し、物価も徐々に上昇しているのですが、如何せん賃金がそれほど上昇していないという問題があります。加えて、2000年当時と比べても各種税金や社会保険料の従業員負担分は徐々に増加しており、わずか20年で1割以上、日本人が自由に使えるお金は減っているのだという事実は否定のしようがありません。
このデータを見る限り、2012年から景気回復が続いていたと言われても、ピンとこない一般人がほとんどだということには納得せざるを得ないのである。
しかし、彼らが同時に主張するように、「貧富の差が広まっただけ」だというのもまた事実であり、2015年以降、世界のトップ1%の超富裕層が保有する資産が、残りの99%が保有する資産を超過するというほどの格差の広まりを見せているのです。

これは日本に限った話ではなく、全世界を対象としたデータですが、日本も貧富の差が広まっているのは同様だと考えられます。
では、なぜ景気の回復を実感していないのに、貧富の差だけが広まっていったのでしょうか?その理由の最たるものが、『投資を続けていたか、否か』の違いになります。
景気回復の実感が無いとは言え、2012年以降、アベノミクスによって低迷していた日本株が大胆な政策によって回復してきたのは事実です。
2012年頃、日経平均株価は8,000円台後半から9,000円台をうろうろしていました。

前年に発生した東日本大震災による影響も凄まじく、また、当時の民主党政権による不甲斐ない政治の影響もあり、日本株はこれでもかと言わんばかりに叩き売られた状態でした。
ですが、2012年に自民党政権が与党に返り咲くと、前述の大胆な政策によって、株価は一気に急騰。実体経済とはかけ離れようが、日経平均株価はこの8年間で2.7倍ほどまで成長したという事実があります。
しかも、この株価の上昇は突然始まったわけではなく、時の政権が日本株の株価を引き上げると宣言した上で実行していたわけです。NISAが始まる前は、株の売買や配当金にかかる所得税は10%でしたし、より広く国民に投資に接してほしいという考えから始まったNISAではいろんな批判がありながらも、今でも続く制度となっているのです。
「今から日本経済を支えて株価を引き上げますよ」と言われて、素直に株式投資を始めた人々は、戦後2番目の長さと言われた景気拡大期の間に着実に資産を築き上げた一方で、ただ指を加えて眺めていただけの一般人は何の恩恵も受けず、むしろ実質賃金の低下により日々の生活にすら困窮することになっている訳です。
日本の景気拡大が始まった頃には、私はすでに米国株投資を始めていたため、米国株投資一本でここまで続けてきましたが、もしも投資を始めようかというタイミングで、アベノミクスのような政策が打ち出されていたら、もしかしたら日本株オンリーで投資を続けていたかもしれません。私が投資を始めたときに、日本の与党が民主党政権だったことは、ある意味米国株に目覚めるきっかけとなりましたので、不幸中の幸いだったのかもしれないです。
ともかく、日本株にせよ、外国株にせよ、着実に投資を続けてきた人々だけが、この景気回復期の恩恵を受けることができたのであり、政府が株価を底上げすると言ってくれている大きなチャンスでも何もせずにぼーっとしていた人との間に貧富の格差が生じるのは、至極当然のことだと言えるのではないでしょうか。
株式投資を始めても、始めるタイミングや投資期間、手法など様々な要因がありますので、必ず儲かるとは断言できないです。私としても、長期投資をすれば儲かる可能性が高まるという程度にしか申し上げることはできません。
ですが、これだけ確実に言えるのは、投資をせずにサラリーマンとして給与収入だけに頼った労働を続けている限り、あなたがお金持ちになることは相当難しく、時間が経過するごとにその差はみるみる広まり、気づいた時には取り返しのつかないほどの格差となってあなたの前に立ちはだかることでしょう。
それが嫌なら、今すぐにでもお金について、投資について学び、余剰資金を生み出してコツコツ投資に回していくというのが、正しい行動と言えるのではないでしょうか。
いくら文句を言っても誰も助けてくれるわけではなく、過ぎ去った好景気のボーナスステージを取り戻すことは決してできないのですから。