外食チェーン大手のペッパーフードサービスが、主力の「ペッパーランチ」事業を売却する方針を固めたことが18日、分かったとのことです。

もう一方の主力事業である『いきなり!ステーキ』のイメージが強いペッパーフードサービスですが、その社名の通り、以前は『ペッパーランチ』が収益の柱となっていました。
ですが、2013年に『いきなり!ステーキ』を開店して以降、その勢いは凄まじく、一時的には大ブームとなり、その勢いを表すかのように店舗数も一気に拡大していました。
しかし『いきなり!ステーキ』ブームはわずか数年で過ぎ去り、後に残ったのは不良債権とも言える赤字店舗の山。昨年には、社長自らが手書きで『いきなり!ステーキ』がいかに素晴らしいかと言うことを自画自賛すると言う、なんとも痛々しい貼り紙が大変話題となりました。

公衆の面前に見えるようにこう言う貼り紙を出し始めた時点で、もうダメだな・・・と言う感じはひしひしと伝わってきたのですが、実際に『いきなり!ステーキ』はコロナウイルスの影響を受ける前から、かなり業績が悪化しており、昨年12月の決算では、GC注記と言う、倒産の危険が高い企業に付けられる注記が付けられるまでに落ちぶれました。

そんな中で、業績の足を引っ張っている『いきなり!ステーキ』事業ではなく、まだ少しだけ利益率がマシな『ペッパーランチ』事業を売却すると言う選択肢には大変驚きました。
売却額は100億円近くになると言うことで、かなり安くで買い叩かれている感じもあり、ペッパーフードサービスの財務状況が相当悪化しているのだと言うことが分かります。
まあ、単純に『いきなり!ステーキ』事業は買い手が見つからないと言う可能性もありますが、収益性の良い事業を売却し、収益性の悪い事業を引き続き運営していくと言う選択肢はあまり得策とは言えません。
社長が優秀な方に交代して、事業の立て直しを図ると言うのであれば、将来性はあるのかも分かりませんが、社長の変更はされず、これからもワンマン社長による経営が続くことになるのでしょう。
直近の大成功例である、『いきなり!ステーキ』に愛着が湧いて手放すことができないようにすら見える今回の判断は、ペッパーフードサービスの将来性に更なる陰りを見せそうな予感がします。
100億円程度の資金が手に入っても、稼ぐ力が大きく削がれるとなれば、そのまま資金を浪費していくだけという結末になりかねません。
何より顧客に『上から目線』であると感じさせた時点で、イメージ戦略が大切な外食事業で生き残るのは大変厳しいでしょう。日本の顧客は、お金は少ししか払いませんが、安くで美味しい食事ができる店舗が多いですから、非常に外食店を見る目は厳しいです。
あの貼り紙を貼った時点で、相当印象が悪化したので、顧客の印象を良くするにもかなりの時間を有することになるでしょう。
そしてそんな長い時間を耐え切るほどの体力が『いきなり!ステーキ』に残っているのか?と言うとなかなか厳しいんじゃないかなと思います。
もちろん潰れかけのままでも、なんとか資金到達をしてゾンビのように生き残っている企業もたくさんありますが、再びペッパーフードサービスが大きく成長をすることがあるとしても、何年と言う期間が必要なのではないでしょうか。
業績が悪くても何も気にすることなく、ワンマン経営ができると言う日本企業は思っている以上に多いです。
こうしたワンマン企業は業績が悪化すれば、本来は、取締役会が昨日してCEOの交代を迫るべきなのですが、それができず、ズブズブの関係になっているのが日本のワンマン企業の問題です。
今後、ペッパーフードサービスが復活するのかどうかは分かりませんが、今の体制が続く限りは大きく回復することは見込めず、少なくとも個別株として投資冥利のある企業とは言えないのではないでしょうか。