本日6月10日は、「時の記念日」が制定されております。今からちょうど100年前、1920年に制定された時の記念日は、「時間をきちんと守り、欧米並みに生活の改善・合理化を図ろう」という趣旨のもとで制定された記念日です。
今や日本人の方が時間に正確とも言えるかもしれませんが、当時の日本はまだ欧米各国に追いつけ追い越せという時代でしたので、時間を守って産業の発展と近代化を進めるために制定されたのかもしれません。
そもそも今日が時の記念日に制定されたのは、「日本書記」の記述に、西暦671年6月10日に日本で初めて『漏刻(ろうこく)』という水時計が、時刻を示した日であると記録されているからだそうです。
そんな長い歴史に想いを馳せながら、今回は投資家らしく、長期投資という観点から『時間の大切さ』を考えていきたいと思います。
今から100年前、日本で時の記念日が制定された1920年頃は、世界中では今よりもっと大混乱の最中にありました。
1918年から始まった当時の流行病、『スペイン風邪』によって、戦闘を続けることが困難となったため、第一次世界大戦が終結し兵士が祖国へ帰還したことでさらに世界中で感染が広がり、2020年の年末までにはこれは当時の世界人口の4分の1程度に相当する5億人が感染したとまで言われました。
そんな環境の中、第一次世界大戦の戦勝国となり、債務超過から債権国に変貌した米国では、株価の上昇が始まり、1919年にNYダウは初めて100ドルを突破しました。
ですがその後、1920年には100ドルを割るなど、米国で投資ブームが始まった『狂乱の20年代』の始まりとしては些か地味な値動きとなりました。
そしてその後、1929年に世界恐慌が訪れるまでにピーク時には381ドルまで成長し、10年間で4倍ほどにまで成長しました。しかし世界恐慌で株価は大暴落し、再びNYダウは2桁台に。その後1934年に100ドルを超えて以降、2桁台に戻ることはありませんでしたが、第二次世界大戦中も株価は低迷するなど、NYダウは100ドル台前半からなかなか脱することが出来ませんでした。
ちなみに、『投資の神様』と呼ばれるウォーレン・バフェット氏が初めて株式取引をしたのが1941年ですから、NYダウが低迷していた当時から投資を続けることが出来ていれば、そりゃ莫大な資産を築き上げることができるだろうなと感じます。
もちろん、そんな長期に渡って投資を継続し続けてきたということ自体が凄まじいことであり、バフェット氏が素晴らしい投資家であることに変わりありません。
さて、戦時中には低迷したNYダウも、戦後米国がソ連と並んで超大国となると、一躍成長期に入り、1972年に初めて1,000ドルを超えるまでは今となっては、ほんの誤差程度としか感じないほどの右肩上がりを見せています。
この間も投資ブームが訪れては消え、リセッションも経験してきましたが、結果的に戦後から20年ほどの間に、電気・自動車などの産業が爆発的に成長し、NYダウの成長を下支えすることになりました。
そしてNYダウが1,000ドルを超えて以降のNYダウはまたしても足踏みを始め、1982年以降に大きく成長するまで、10年ほど停滞期を迎えます。しかしこの停滞期も次の成長には必要なフェーズだったのかもしれません。
1971年のニクソン・ショックによって、金との兌換制度という制約がなくなった米ドルは、市場に出回る資金の供給が爆発的に増え、世界中の貨幣の頂点に立つきっかけとなりました。
そしてソ連の崩壊によって、米国一強時代が到来し、1999年にはついにNYダウは史上初の1万ドルを突破するまでに成長します。100ドルから1,000ドルまでは、1919年から1972年まで、半世紀ほどかかりましたが、1,000ドルから1万ドルまでの間は四半世紀となり、この期間に加速度的に米国が成長したことが分かります。
もし1,000ドルから1万ドルまでと同じペースで米国株が成長するのであれば、1999年に1万ドルを突破したNYダウは、2026年には10万ドルを付ける計算になりますが・・・さすがにそれは無いでしょう。
最近では先進各国で、低インフレが続いていますから、過去と比較して株の成長が遅くなるのは仕方のないことです。
しかし、年を経るごとにどんどんと成長のスピード感は増しており、100年前に100ドルを超えたばかりだったNYダウは、この100年でもうすぐ3万ドルが見えて来ようかというほどの成長ぶりを見せました。
1929年の世界恐慌の直前には、楽観論が市場に広がり、「株価は永久に成長する」とまで言われていたそうですが、結果的に大暴落を経てなお、当時とは比べ物にならない水準まで成長したことに変わりはありません。
結果論ではありますが、世界恐慌後、15年ほどの低迷期を除けば、度重なるリセッションを経験しながらも株価は10年もかからず元の水準まで回復し、さらに大きく成長しています。
過去どんなタイミングで投資していても、米国株への長期投資に関して言えば、大きなリターンを得ている投資家の方が圧倒的に多いのです。
時は金なりという言葉がありますが、投資においてはまさに時間は変えようのない金銭的価値を有するものです。時間をかけて長期投資を行うことは、複利の計算をうまく活用して着実に資産を増大させていくことに他ならないからです。
さらに、時間はいくらお金を出しても戻すことが出来ない、大変貴重で有限の資産です。本日は時の記念日ということで、改めて時間の大切さを噛み締め、時間をうまく活用することで人生をより豊かなものにしていけるよう、皆さん一人ひとりが行動していくことをオススメしたいと思います。