ブルームバーグの記事によれば、先週の米国株市場では、今まで大きな調整をした米航空会社株の上昇が目立ったことから、今年5月の始めに保有していた米航空株を全て売却した『投資の神様』ウォーレン・バフェット氏を揶揄する場面があったとのことです。
トランプ氏はホワイトハウスでの記者会見で「人生を通じて常に正しかったウォーレン・バフェット氏のような人でも間違いを犯すことがある。私は彼を非常に尊敬している。彼らも間違いを犯す」と語った。
確かにバフェット氏が航空株を売却したという報道があったタイミングは、くしくも航空株が底値に近い状況で、例えばデルタ航空(DAL)は5月中頃からジリジリと株価が上昇してきているのである。

バフェット氏が売却したタイミングは直近の底値に近く、あのバフェット氏が『狼狽売り』してしまったと捉えられてもおかしくありません。

では、バフェット氏の投資家判断は間違いで、バフェット氏はクソダサい投資家になるのか?と言われると、私はそうは思いません。まあ、トランプ氏もバフェット氏を尊敬しているというように、彼を非難している訳でも、馬鹿にしている訳でもないのでしょうが。。。
バフェット氏が航空株を売却した理由は、バフェット氏本人が語っているように、「外出制限が人々の行動に与える影響は分からない。3~4年後に、昨年までのように飛行機に乗るようになるのか見通せない」という理由からです。
今は景気が回復するという見通しで、叩き売られていた銘柄に資金が戻ってきているわけですが、いつまでもそのような状況が続くとは限りません。実際に経済が回復してから、業績がどうなるか予想がつかないとバフェット氏は言っているのです。
株価は思惑で上がり、事実で下がるものではありますが、今の米国株市場は、あまりに期待度が先行しているような気もします。
バフェット氏は、自らの意思で理解できなくなる可能性が高いビジネスをやむなく損切りしたのですから、投資判断は間違っているとは言えないでしょう。
本当に判断を誤ったと言えるのは、バフェット氏が売ったという報道を聞いて、慌てて保有していた航空株を叩き売ってしまった、『自称・バフェット流』の投資家たちでしょう。彼らはバフェット氏の後をついていくだけのハイエナですから、彼らこそ一番の底値で手放してしまったクソダサい投資家と言えるでしょうね。
そもそも、バフェット氏は『株式の理想の保有期間は永遠』としながらも、結構な頻度で売買をしています。投資先として『永久保有』するほどではなくても、優良と判断したら投資しているというものも多いのでしょう。バークシャー・ハサウェイ(BRK)のポートフォリオには上場・非上場合わせて大量の企業が組み込まれていますからね。
しかしそういう銘柄は、意外と短期間(と言っても数年単位)で売買しているのがバフェット氏の投資スタイルです。彼が今後の見通しが悪いと判断したのであれば、損切りしても負けではないのではないだろうかと私は考えています。
もしも仮に投資で勝ち負けを判定するとした場合、自分の確固たる考えのもとで投資判断ができたのであれば、例え損失が出ても勝ちだと思います。逆に、どれだけ利益を上げてもよく分からない売りをしてしまえばそれは投資で勝ったとは言えないのではないでしょうか。
私も株を売った時は、果たして自分の投資判断が合っていたのか、自問自答したくなります。
10年間で2回だけ株を売りましたが、ビザ(V)でも、ウォルト・ディズニー(DIS)でも利益を上げることはできました。ただ、売りの判断が合っていたのかと言われると、結果論ですがその後の値上がりを見ると自信がなくなります。
特にビザは、一部とは言え売った理由が『株式分割をした』という曖昧な理由でしたから、これはハッキリと負け取引だと言えるでしょう。

そういう意味で言うと、先日のウォルト・ディズニーの売却はある程度納得のいく撤退だったので、ビザほどの負けトレードとは言えないかもしれません。

とにかく私が思うのは、利益が出ようが損失が出ようが、自分で納得のいく取引をできたのであれば、何も問題ないと言うことです。その点で言えば、当然バフェット氏は自分の納得のいく取引をされているので、外野がとやかく言うことではないのだと感じます。
そもそもバフェット氏は航空会社に否定的でしたし、ITバブルの頃にも、『投資ブームに乗れないバフェット爺さん』扱いされていました。しかし結局はその後も市場平均を上回るリターンをたたき出し続けたのですから、バフェット氏の投資判断を我々のような個人投資家が推し量れようはずがないのです。
バフェット氏の投資判断が正解だったかどうかは、数年後に経済活動が元通りになった時にわかるのかもしれません。私自身も、航空会社は旅行目的で利用される面についてはコロナショックの終焉とともに回復するだろうと見ていますが、今までのようにビジネス目的の航空機利用というのはかなり減るんじゃないかなと考えています。
となれば、航空事業は今までよりは収益性が悪化する可能性も否定できません。もちろんこれも私の妄言ですから、実際にどうなるかは分かりませんけどね。
ですが、バフェット氏の投資判断は、『長期投資家』としては、それほど誤ったものではなかったんじゃないかなと思います。もちろん航空会社が消えて無くなるということはあり得ませんので、また投資冥利が出てくる航空会社も表れるでしょう。
ただ、もし個人投資家が投資するのであれば、その事業のメリット・デメリット、将来性や収益性など、様々な角度から企業を分析して納得した上で投資することが必要だということは肝に銘じておきましょう。