週刊現代に掲載されていた記事が興味深いものでした。

中身としては、かつての『仮想通貨ブーム』で大儲けした方たちが、重税に苦しむという内容でした。
今回の記事の主人公は40代のシングルマザーである樋口さん(仮名)。仮想通貨ブームが訪れる前にたまたま買っていた60万円分のマイナーな仮想通貨が、急騰し、ピーク時には樋口さんの利益は約2億8000万円となり、投資額の実に約470倍に膨らんだと言います。
確かにこのままだと、ただの含み益なのですが、仮想通貨による投機ブームが起こると同時に、国税庁も税金の新しいルールを知らず知らずのうちに作成していたということです。
「国税庁が示したルールは、『保有する暗号資産を他の暗号資産を購入する際の決済に使った場合は、その時点での他の暗号資産の時価と、保有する暗号資産の取得価額との差額を所得とみなす』というものでした。
つまり、含み益を持つ暗号資産を他の暗号資産と等価で交換した場合、その含み益に課税するということです。暗号資産の世界では、乗り換えはごく当たり前の行動で、その意味でもこの文書は極めて重要でしたが、そのことに気づけなかった投資家は少なくないでしょう」
私は仮想通貨やFXと言った金融商品には一切手を出していないので、あまり詳しい方ではないのですが、国税庁が示したルールはごく当たり前のものなんじゃないかと感じます。
仮想通貨同士の乗り換えとは言え、その取引の実態は今保有している仮想通貨を売却して、その資金で違う仮想通貨を買っているようなものですよね?
ということであれば、売却した仮想通貨に課税されるのは一般的に見てもおかしなルールだとは思いません。
ですが、仮想通貨でたまたま大儲けした彼らは、そんなことも深く考えていない素人の方も多かったため、仮想通貨で得た収益を換金してしまった分はすでに使い切ってしまったり、今保有している仮想通貨を売り払っても到底、追徴課税分を支払うことができないという惨状に陥っているようです。
仮想通貨についてちゃんとしたルールが明文化されておらず、突然ルール変更をしてきた国税庁にも悪意を感じる面もありますが、それまでハッキリと決まっていなかった新しい技術や商品に対して新しいルールが適用されるというのは珍しいことではありません。
そして仮想通貨はFXなどとも比べても非常にハイリスク・ハイリターンの投機商品となっており、最近は底値から回復している仮想通貨もあるようですが、それでも仮想通貨バブルのピーク時の価格までは程遠いという状況が続いています。
仮想通貨バブルの頃は、将来の決済手段として大いに期待され、その過熱感が市場を取り巻いていたわけですが、いまだに決済手段としての仮想通貨は確立されておらず、当然、追徴課税分の税金支払いにも利用できません。
仮想通貨が決済手段にとって変わられるのかどうかは今のところ分かりませんが、仮想通貨を決済手段として活用すべく開発されてきた技術は、従来の決済手段のセキュリティ強化にも用いられ、依然として従来の決済手段の優位性は変わらないどころか、その差は広まっているようにさえ感じます。
仮想通貨は未来の決済手段として期待されていたにも関わらず、今や投機商品としての人気が高く、そのボラティリティの高さから、決済手段としては非常に扱いづらいモノへと変化しています。
もちろん、十分に勉強された上で、金融商品として仮想通貨を保有している方もいらっしゃいますが、投資経験のない素人が、『他の人から勧められたから』という理由で不勉強なまま、虎の子の資金を投じるには非常にリスクの高いものだと感じます。
まぐれで十分に儲かっていた樋口さんのような事例でさえ、税制の改正を頭に入れていなかったために追徴課税で生涯かけても支払うことができないような税金が重くのしかかってしまうわけです。
税制改正の情報なんて、今や少し検索すればすぐに出てきますし、ご丁寧に変更箇所について説明してくれている記事もたくさん存在しています。
投資を始めるのも、節税も、何もかも人に任せっぱなしで、利益だけ享受した上で税金も支払わなくて良いなんて都合の良い話は滅多に存在していません。
少なくとも個人の素人投資家がそのような良いとこ取りができる投資案件なんてほぼ皆無でしょう。
別に税法の全てを網羅しろっていう訳ではありません。そんなもん全部丸暗記したところで、毎年変わるんですから意味はありませんし、調べればすぐに見つかります。
ただ、仮想通貨を保有しているなら仮想通貨に関する税金、株を保有しているなら株に関する税金についてはある程度興味を示し、せめて確定申告が始まる前には、最新の税金に関する情報を収集するくらいの努力は最低限しておくべきではないでしょうか。
税金に関して言えば、知らぬ存ぜぬで押し通せるような話ではありません。自分の勘違いや無知で一生を棒に振るようなダメージを負わないためにも、金融商品を保有しているのであればその商品について勉強を継続することを怠らないことが重要だと言えるのではないでしょうか。