ロイター通信によると、『投資の神様』ウォーレン・バフェット氏が、保有するゴールドマン・サックス株の8割を3月末までに売却していたことが明らかになりました。
バークシャーハサウェイ(BRK)が四半期ごとに米証券取引委員会(SEC)に提出する保有株報告書の中で明らかとなり、先日発表された、USバンコープ(USB)株の少量の売却報道以上の衝撃を与えました。

さらにJPモルガン(JPM)株も3%程度売却しており、バフェット氏が金融セクターに対して相当弱気になっていることが伺えます。
コロナショックに対する金融政策として米国政府が莫大な金融政策を施したことで、市場にカネ余りの現象が発生する可能性が高く、株価は今の水準でもバブルと言えるかもしれない状況にあることから、金融セクターに懐疑的になる気持ちもよくわかります。
とは言え、経済対策を施行しない訳にもいかず、米国政府はよくやっていると私は思います。
今回の緊急時の対応はともかく、ここに至るまでの、低金利がすっかり定着してしまった世の中の方が異常だったと言え、それゆえにこれ以上金利を引き下げることができないというツケがここにきて発生したという訳です。
低金利が続いたため、株価の上昇が正当化され続けてきたことを考えると、その恩恵を受けてきた私にとっては、悪いことばかりではなかったんですけどね。
とまあそんな環境でにおいて、セクター別で見てみれば、金融セクターはこの好景気だった2010年代においてさえ、それほど大きく成長したわけではありませんでした。
金融セクターに投資するバンガード社のETF、VFHを見てみると、2010年代初頭に30ドル弱ほどだったため、10年以上経った今でも、2倍ちょっとになるのが精一杯で、現在は下落したために70%程度の上昇に留まっている。

それでも十分凄いリターンだという声も聞こえなくはないですが、好調だったヘルスケアセクターのVHTが過去10年で3.5倍、さらに好調だったハイテクセクターが4.5倍に成長したことを考えると、金融セクターに対する投資は、大きなリターンをもたらしてくれなかったことがわかります。


これもまた結果論とは言え、低金利が当たり前になった世の中では、いかに金融セクターが厳しい状況にあるかということが伝わってきますね。
それにしてもバフェット氏がこれほど活発に活動するのを見るのは久しぶりな気がします。投資の神様が大きく動き始めたのは、時代の変化を感じたからでしょうか。
キャッシュポジションをさらに高めて、大型案件に備えているのでしょうか。それでも、バフェット氏は今の水準では強気に買い増しすることができないという旨の発言もしています。
まだまだ人々は株高を信じており、バフェット氏の目には短期的なバブルが発生しているように写るようです。
前述通り、歴史的な金利の低下によって株価は異常なほどに高値まで持ち上げられ、決して喜んで株を買い増しするような状況ではないのかもしれません。
バフェット氏は以前から、「バークシャー株のPBRが1.2倍を下回れば、割安だ」としており、自社株買いの目安としていましたが、3月末ごろ、バークシャー株のPBRが1.1倍まで下落した時、自社株買いを実施しませんでした。
バフェット氏は、今のPBRはバークシャーの資産を過大評価しているかもしれず、今のバークシャーが割安かどうかは誰にも分からないとして、自社株買いの決行をしなかったのでしょう。
と、ここまで見ればバフェット氏が臆病風に吹かれたように見受けられるが、決してそうではありません。バフェット氏は今まで株式市場に満ちあふれていた幸福感が引き潮になるの感じて持ち株の売却を進めていくことを決めたのでしょう。
ですが、長期的に見れば、米国株は強気と考えられており、バフェット氏も「米国を止められるものは何もない」として、これからもその姿勢を崩さないつもりでいるようです。
今は一時的に経済が停滞していますが、これからの米国および世界中の発展は、約束されたものだと私も考えています。そうなれば、必要以上に慌てふためず、我々のような個人投資家は株を握りしめておけばいずれは莫大な資産へと成長していくだろうと考えられます。
バフェット氏の投資判断は参考にすべきものだと思いますが、バフェット氏が常に成功し続けてきたかというとそうではありません。バフェット氏が売ったからと言って、金融セクターの株を手放すのは人に投資判断を任せているのと同じであり、きちんと自分なりの理由を持って売却すべきと私は思います。