ブルームバーグによると、オーストラリアのウエストパックバンキングの上期(2019年10月-20年3月)利益は、前年同期比70%減少したとのことだ。

また同時に発表された内容によると、上期の現金利益は9億9300万豪ドル(約677億円)に減少し、配当支払いを実施するかどうかの決定を経済見通しがはっきりするまで先送りしたとのことです。
ウエストパックバンキングは、数年前まで、ADR(米国預託証券)として、高配当銘柄として個人投資家にも大人気でした。
オーストラリアのADR銘柄は現地の源泉徴収がゼロとなりますので、NISA枠で買い付けをすれば高配当収入をそのまま丸々受け取ることができます。NISA枠で投資する対象としては、フィリップ・モリス(PM)や、英国のブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BTI)やユニリーバ(UL)などと同様、かなり人気の銘柄でした。
過去1年を振り返ってみてもウエストパックバンキングの株価は20ドル前後をうろうろしていたため、『20ドル割れになったら買い』という風潮がありました。

またオーストラリアの4大銀行の1つに数えられるウエストパックバンキングは、200年を超える歴史があり、オーストラリアの安定的な経済成長も相まって投資冥利のある企業と考えられてきました。
それがつい半年前には減配と増資という、投資家にとってはマイナスとなる発表を連発していました。

もともと、ウエストパック・バンキングは業績に連動した配当金を支払うというスタンスですので業績が悪化すれば配当金が払われなくなるのも仕方のないところではあります。
最近は、米国企業でも例えばボーイング(BA)がしばらくの間、無配となりましたが、米国企業では減配や無配となることはかなり珍しいのではないでしょうか。
オランダに本拠を置き、オランダと英国の石油会社であるロイヤルダッチシェル(RDSb)が先日66%もの減配を発表した反面、事前にアナウンスしていたものの米国の石油会社であるエクソン・モービル(XOM)が配当金を維持したことを見れば、相対的に米国企業が配当金を維持してくれる企業が多いというのが分かるかと思います。
まあ、業績が悪化しているのに配当金を支払うのが本当に株主第一主義なのか?という点に関しては少し考えるところもありますが、資本主義のトップである米国では、企業が株主へ還元するということの優先度がとても高く、減配するということは経営者として落第だという評価を下される可能性も大いにあるのです。
もちろん、こんな非常時にも同じように経営責任を問われるかは定かではありませんが、米国ではそれくらいシビアな現実があり、「CEOには高い役員報酬を払ってるんだから、株主還元はしっかりやれよ」というのが基本的な考え方なのかなと思います。
今回のウエストパックバンキングの無配転落は仕方のないところではあると思います。そもそも見通しが悪化していた中で、今回のようなコロナショックという未曾有の問題に面している訳ですからね。
ですがそれを踏まえても、資本主義に基づいて長期的な目線に立って株式投資を続けるのであれば、やはり資本主義のトップである米国に投資するのが合理的な選択なのかなと感じます。
オーストラリアが株主軽視をしているとは言いませんが、米国ほどの株主第一主義ではないということが分かります。
また米国と覇権を争う中国に至っては表立って社会主義を主張しており、経済規模は物凄いものの、やはり投資先としては信用できません。
じゃあ、相対的に投資先として魅力を感じるのは、やっぱり米国ということになりそうです。
配当金が全てとは言いませんが、株主をきちんと尊重する慣習が根付いている米国こそ、株式投資をするにはベストな国であると私は自信を持ってオススメいたします。