共同通信の報道によると、民間エコノミストさんが試算した数字では、公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の1~3月期の運用は17兆円前後の赤字になるとみられることが分かったとのことです。
この報道によりネット上がざわついており、
『さっさと早く売って運用を見直してくれ』
『買い入れするタイミングが悪すぎる』
『株式の割合が多すぎる』
と言ったよくわからない批判が大半を占めている。この1-3月期の底値でGPIFを取り上げて記事にしたときは、多分25兆円ほどの含み益の減少になるかなという試算だったので、それよりは8兆円ほどマシになったと言えるのではないでしょうか。

運用赤字という損失しているような書き振りには、うーん・・・と唸ることしかできないのですが、このようなマスコミの報道にざわつくネット民の皆様も如何なものかと思う次第です。
GPIFが株を買い入れするタイミングは果たして悪かったのでしょうか。いえいえそんなことはありません。2001年から運用を開始しているGPIFは、2019年の第三四半期時点では、運用資産額は168兆9,897億円、含み益は+75兆2,449億円となっており、たとえこの四半期で17兆円の赤字をたたき出したとしても含み益はまだ60兆円ほど抱えている状態です。
GPIFの運用資産の中には債券や日本株などの収益性の低い資産もたくさん含まれていますので、個人投資家ほどの収益性の高さを享受することはできませんが、それでもバランスよく運用されていることが以下のグラフと表からよく分かります。


外国株式が27.58%と少し割合が多くなっているのは、それだけ外国株式の成長率が他の資産と比較して高かったからと見られるのではないでしょうか。もし外国株式だけで運用していたらもっとGPIFの保有資産額は増加していただろうなと思います。
もし全額を外国株式で運用していたら、配当金だけで一体どれくらいの日本人の年金を賄うことができたでしょうね。もちろんそれほどアクティブな投資を日本人が許すわけはないので不可能ですが。
相当保守的な投資をして堅実に収益を上げているGPIFがこれほどまでに叩かれるのは日本人のファイナンシャルリテラシーの低さが問題と言えるでしょう。
コロナショックで世界的に『人間の本性』のようなものが見えてきて、残念な気持ちはあるのですが、日本人はいつの時代も変わらず『お金に疎い平和ボケ』の様相を見せております。
こんな下落相場でも60兆円を超える含み益を享受することができるのは、2001年から継続してコツコツ投資をしていたからだと言えるのではないでしょうか。
もしGPIFが投資のタイミングを見計らって、ギャンブルにあたる『タイミング投資』をしていたとしたら、それこそ国民は激怒していいんじゃないですかね。
もし仮に、GPIFが万一の場合についての危機管理のために、マイナス金利がこれからも深堀りされていくであろう日本の国債だけで運用していた場合、それこそ我々の年金は、今の60代ですら存命の間、無事に支給されるか分かったモノではありません。
逆にGPIFがタイミングを見計らった投資をすれば今以上に日経平均株価は乱高下するでしょう。今の日本株を買っているのは日銀を始め政府関係者くらいですから、GPIFがタイミングを見計らって売れば暴落し、タイミングを見計らって買い増しすれば暴騰するだろうと予想されます。
別に日本株が乱高下しようが私はどちらでも良いのですが、今よりもっと不安定で批判の対象となり得る投資をするか、国債だけを握り締めてジリ貧になるのか。そのどちらもあり得ないと思いますので、GPIFは比較的バランスよく良い投資をしているのではないだろうかと考えられます。
元記事にも、
世界経済の減速懸念が拡大する中、株式比率の高い運用のリスクが顕在化した形。ただGPIFは長期的な運用をしており、短期的に運用が赤字になっても直ちに年金の支給に影響は出ない。
って書いてあるのですから、あまり騒いでリテラシーの低さを露呈させるより、黙って見守るくらいの方が良いのではないだろうかと感じます。
国民がリテラシーの低さを露呈させればさせるほど、数字を取ることに必死なマスコミは馬鹿げた記事を書くものです。
今の日本のジリ貧の状況を生み出したのは他でもない国民とそれに踊らされたマスメディアだと言えるでしょう。これ以上、馬鹿で無知で平和ボケしていることを知らしめる必要はなく、自分自身の投資手法と同様、淡々と無感情に忘れておくくらいのスタンスの方がベストだと言えるのではないでしょうか。