最近は株価が動かない週末だけが安息の日とお考えの株式投資家の方々も中には多いのではないでしょうか?当ブログでも繰り返し取り上げているように、2月の末ごろから株式市場はボラティリティが大きく、少しずつ株価が切り下がっていく悲観的な状況が続いています。
『コロナショック』という形で未知の病に対して人類が屈しているように捉えられがちな株価の調整局面ですが、実はコロナウィルスの流行は株価下落のただのきっかけに過ぎないのではないか?というのが今回の記事の趣旨になります。
今回は大きめの調整でなかなか底が見えない状況が続いていますが、まだ始まったばかりとも捉えられます。ですが、前回株価が大きく調整した局面を皆様は覚えておられますでしょうか?
前回の調整は2018年の年末。『クリスマスショック』と名付けられたそれは、非常に短期間での調整だったため、底値で買えずに悔しい思いをした投資家も多いのではないでしょうか。

この時は暴落の連鎖などと言われ、世界中の株価指数も一瞬で大きく値下がり。日本株も日経平均が2万円を割るか?という水準まで下落するほどでした。

この時はNYダウも1日で一時700ドルを超える下落があり、大騒ぎしていました。今となってはかわいい下落です。
ところで、この2018年末の下落の要因は、中国の景況感の悪化や米中貿易戦争の再燃などいろんな理由が挙げられていましたが、2018年末に『逆イールド』が発生したことを皆さんは覚えていますでしょうか?
『逆イールド』とは短期金利が長期金利を上回る現象で、逆イールドの発生から1〜2年程度でリセッションが訪れているというケースが過去の経験から学ぶことができます。
もちろん、『逆イールド』が発生したからと言って景気減速が訪れなかったパターンもありますが、遡ると2005年〜2006年にかけて発生した逆イールドの後、2007年に『リーマンショック』が訪れ、1998年、2000年に発生した逆イールドの後には2001年に『ITバブルの崩壊』が訪れました。
そもそも逆イールドの発生がなぜ株価の下落に繋がるのかというと、逆イールドの発生そのものが、『投資家の心理が冷え始めている証拠』と言えるからです。大口投資家が懐疑的になれば資金が株式から国債に移り始めます。
2018年末はまさに米中貿易戦争の高まりで懐疑的な投資家が増え、長期債への資金流入が続いた結果、価格は上昇(金利は下落)し、逆イールドが発生したと言えます。
そしてその後、あまりに長期債の金利が低くなれば投資冥利のない金融商品となり、株式市場に資金が戻ってきて逆イールドは解消、株価は上昇するものの、投資家心理の冷え込みが実体経済に影響を与えるのには年単位のタイムラグが発生しますから、実際に経済が冷え込んだことが確認できた数年後にリセッション入りとなるのではないでしょうか。
逆イールドとリセッションが完全な相関関係にはなっていないので完全に説明することはできませんが、実際に逆イールド後1〜2年程度でリセッション入りする可能性が限りなく高いということは歴史が証明してくれています。
今回のコロナショックでは、すでに株価はピーク時から13%程度下落しています。これは2003年のSARSでの株価下落が34営業日で▲9.8%、2009年の新型インフルエンザでの19営業日での▲7.1%の下落をすでに超える下落率です。
ですが、改めて考えてみたところ、SARSや新型インフルエンザと、今回のコロナウィルスでの違いは、感染力もありますが、それ以前に流行した時期の市場環境が全く違います。
SARSが流行した2003年、新型インフルエンザが流行した2009年は、共に2001年の『ITバブルの崩壊』、2007年の『リーマンショック』から2年後に発生しており、株式市場はまだ底値からの『回復期』に過ぎませんでした。
対して2020年の『コロナショック』は、直前にNYダウが最高値を更新するなど、明らかな景気の『最盛期』です。そもそもリセッションがもうすぐ訪れようとしている時に未知のウィルスの世界的な大流行が発生すれば、前例を無視した暴落が起きるのは当然と言えるでしょう。
つまり今の株式市場は、コロナウィルスとリセッションの『合併症』に罹っていると言える状態であり、NYダウですら『半値八掛け二割引』という状況に陥っても何らおかしくはないのです。
コロナウィルスが市場に大きな影響を与えているというよりは、ついに予定通りのリセッションが来たのだなという認識でいた方がある意味ラクと言えるのではないでしょうか?
パンデミックでの下落は10%程度じゃなかったのかよ!と狼狽売りした人もいるかもしれませんが、リセッションであれば、株価の下落が10%程度で収まるわけはありません。
まだまだ時間をかけて、下落相場は続く可能性は大いにあると言えるのではないでしょうか。
そんな時はどうしたら良いのかと言われると、私が言えることはただ一つだけで、どんな状況にあっても米国株を買って握りしめておけというアドバイスだけになります。
今回の考察はあくまで推測であり、コロナウィルスが落ち着けば本当に株価は何事もなかったかのように回復し始め、年末にはNYダウが3万ドルをつけているという可能性も否定はできないのです。
ですが、単なるパンデミックではなくリセッションが訪れているのだと考えれば、まだまだ株価が下落するだろうという覚悟もできます。
歴史を遡ってみれば、NYダウはたび重なるパンデミックにも、リセッションにも屈せず、つい1ヶ月ほど前まで市場最高値を連日更新していたではありませんか。
今回のケースがパンデミックによる一時的な下落なのか、それともリセッションとの合併症によるダラダラとした下落相場の始まりなのかは現時点では不明ですが、将来のある時点から振り返れば、今回の下落なんて、右肩上がりのNYダウのチャートの見えるか見えないかの小さな谷間に過ぎないのかもしれません。
歴史上、『今までの歴史通りにはいかない』と大口を叩いていた投資家は数多くいたでしょうが、それらのほとんどはただの戯言にすぎず、人が生み出し、人が営み続けている『株式市場』というシステムは、どれだけ歴史を重ねようとも、人が劇的な進化をしない限り、歴史は繰り返すものだと私は思います。
我々の生活がここ数年で大きく変化したように感じるのは、文明の積み重ね、科学の積み重ねの賜物であり、人類が初めて火を起こし、道具を作り始めて狩猟や農耕を始めた頃からの努力の積み重ねです。
時間が複利効果を生み出すのは、我々投資家が一番よく理解しているはずです。科学の進歩もまた、数百万年の時間をかけて複利効果で成長の幅が大きくなっているだけに過ぎません。
そして我々人類は生物としての進化はほとんど何も遂げていません。いまだに人類は不老不死の存在にはなれず、ただの流行り病にも臥せてしまうのですから。そんな人類が生み出したシステムがたかが200年余りで大きく変化するわけがないのです。
もちろん歴史と全く同じ轍を踏むとは言えませんが、リセッションにもパンデミックにも負けずに投資をし続け、株を持ち続けた投資家が、将来的には最も報われる存在なのだということを、歴史は証明してくれています。
たとえ人類が進化しなくても、人類が築いてきた文明と科学の積み重ねは、複利効果でこれからももっと加速的に成長していくはずなのですから。