当ブログで大人気カテゴリーとなっている『いきなり!ステーキ』に関して、また新たな問題が発覚したようです。

文春オンラインによれば、経営不振にあえぐいきなり!ステーキの東中野店で、外国人留学生の不法就労があったとのことだ。
大爆死となった決算発表から、週明けの株式市場の取引時間を待たずしてこのような不祥事が出てくるあたり、まだまだ『悪材料出尽くし』とは言えない雰囲気が漂っております。

問題の留学生については、昨年10月に学生ビザが切れ、お店を一旦辞めたそうです。ですがその後12月末頃から店舗に戻り再び働かせていたとのことです。
この件について、オーナーと留学生共に違法であることは承知していたものの、年末年始の人手不足を乗り切るために、オーナー側から『働いてほしい』と打診したとのことです。
留学生側は「手伝っていただけでお金は貰っていない」と主張しているが、それはそれで問題だし、どちらにせよ大きな問題である。
いきなり!ステーキのオーナー側は記事の中でこのように語っている。
「自分がやったこととして事実を受け止めて、処分を甘んじて受け入れます。人材の確保は本当に大変なんです。年末年始にかけて、(10月で辞めていた)Xさんの穴を埋めようとしましたが、(新人を雇ったとしても)そんなすぐには焼き手が育たないし、一から教えないといけないということもあり、教育コストもかなりかかるんです。もちろん人手不足ということがなければ、Xさんに声をかけることはなかった。
週刊文春デジタルより
だからと言って、他の直営店とかに人員のヘルプを投げかけることができる環境も今は整っていません。以前は会議が終わってから(他の店長と)一緒に飲みに行ったりとかして情報交換をしていたのですが、2019年に入ってから、会社の経営悪化が進んでしまい、どの店舗も余裕がなくなってしまい、自分の店で手一杯という状況なんです」
社長が社長ならオーナーもオーナー。見事な言い訳っぷりです。言い訳と責任転嫁が社是なのでしょうか。
オーナーがした行為は明らかな犯罪行為であり、違法と知りながら外国人を就労させる行為のみならず、他の従業員の給与口座を経由して給与を支払うなど、マネーロンダリングかよと思うような怪しげなお金の動きは、脱税の一助にもなるため、決して許してはいけません。
ですが、違法行為に手を染めなければならなくなったそもそもの原因は、本部による無計画で無意味な店舗の急増政策によるものではないでしょうか?
何の計画性も無くただ店舗を増やし、結果的に各店舗の収益を落とし他の店舗からヘルプを回して貰えないほどの人手不足を招いたのは、明らかな経営判断ミスと言えるでしょう。
話は変わりますが、皆さんは『小僧寿し』という持ち帰り寿司のチェーン店をご存知でしょうか?小僧寿し(9973)は2018年の12月決算期に債務超過に陥り、上場廃止の危機に瀕しました。
債務超過の原因は当然マクドナルド(MCD)やスターバックス(SBUX)とは違い、『しっかりと』経営不振による債務超過です。

当然株価も見るも無残で、20年前に1,200円ほどだった株価は現在24円。20年で『逆フィフティバガー(50分の1)』という奇跡的な銘柄です。

小僧寿しは今回のペッパーフードサービスと同様、第三者割当による増資で債務超過を逃れましたが、今回の2019年12月期の決算では監査法人の承認を得られず、決算発表を延期しております。
2019 年 12 月期決算発表予定日の変更に関するお知らせ
東証には、「遅くとも決算期末後45日以内(営業日ではない)に決算を開示しなくてはならない」というルールがあります。12月末に決算を迎えたのであれば、2月14日が45日目にあたるので、2月14日に決算発表という企業が多いのです。
ですが、監査法人がOKを出してくれないと開示することはできません(意見不表明や不適正意見という方法もあるにはありますが)から、小僧寿しはまさに今ルールを破ってまで決算をまとめている最中ということになります。
かつて高度経済成長期の日本では、小僧寿しは飛ぶ鳥を落とす勢いだったそうですが、どうして同社はこれほどまでに凋落してしまったのでしょう。その際たる原因が昭和のビジネスモデルである『店舗拡大政策』による失策だと言われています。
今では信じられませんが、かつての小僧寿しは、高度経済成長期の『右肩上がりの日本』を盲信するあまり、店舗をどんどん拡大し、現在のコンビニのように日本地図を塗り尽くすくらいの全国展開するというビジネスモデルを貫いていました。
昭和62年(1987年)には、小僧寿しの店舗数は最大2,300店舗にも及んだと言います。ちなみにこの数字がどれほど凄まじいかというと、現在の回転寿司チェーンの店舗数トップ10のランキングが以下の通りです。(カッコは店舗数)
1位 スシロー(540)
2位 はま寿司(512)
3位 くら寿司(451)
4位 かっぱ寿司(325)
5位 魚べい(128)
同率6位 海鮮三崎港/銚子丸(共に93)
8位 がってん寿司(87)
9位 すしざんまい(59)
10位 長次郎(58)
そしてこれらトップ10の店舗数の合計が2,346店舗となることから、全盛期の小僧寿しの2,300店舗というのがどれほど驚異的かというのがお分かりいただけるだろう。
同社はこのビジネスモデルで高度経済成長の右肩上がりの日本で成功を収めてしまったがために、少子高齢化社会の到来への対応が遅れ、採算の取れない店舗をさらに増やし、広告宣伝費の過剰投入など時代にそぐわない手法をとってしまったがために一気に凋落していくことになりました。
小僧寿しの話が長くなってしまいましたので話を戻しますと、いきなり!ステーキは最近になってやっと採算の取れない店舗を一気に減らしたものの、直前までは小僧寿し同様の『昭和のビジネスモデル』である拡大路線を貫いており、その結果が人手不足による不法就労をせざるを得ない状況を作り出してしまったのだと私は感じます。
今の時代、いきなり!ステーキに限らず、飲食業界は常に人手不足に悩まされており、だからと言ってどのお店も薄利多売のため、アルバイトの給与を上げることもできないという負のスパイラルに陥っています。今回の留学生が他の飲食店でまだ不法就労をしているという点から見ても、日本の飲食業界の闇の深さがよくわかります。
もしくは飲食業界に限らず、どの企業も人手不足に悩んでいるのでしょう。新型肺炎の患者に出張を強要する企業もあるみたいですからね。

こう言った一連の流れ全てが日本企業への投資が報われない原因であり、そりゃ収益性も上がらないだろうなというのが明白です。
いきなり!ステーキでは焼き手はすぐに育たないから不法就労の留学生を受け入れたという話でしたが、昨今のいきなり!ステーキの状況を鑑みるに、従業員教育が後回しになる程忙しそうには思えません。
今こそじっくりと一から新人教育に力を入れて、サービスの向上を図ってみてはいかがでしょうか。
もちろん、焼き手の方々が一人前になるまで、いきなり!ステーキが生き残っていればの話ですがね。