報道によると、新型コロナウィルスに感染していた40代の男性会社員が2月10日に新幹線で愛知県に出張していたことが判明しました。

都内に住む40代の男性会社員は、発熱などの症状が表れたため、病院を受診。単なる”肺炎”と診断されたそうです。しかし昨今の新型コロナウィルスの話題が頭にあったのだろうか、念のためセカンドオピニオンとして別の病院を受診。そこでもまともな検査を受けさせてもらえず”肺炎”の診断を受け、その症状が出た状態で仕事のために新幹線を使って愛知県へ出張し、スーパースプレッダー(感染症を爆発的に拡大させる人)となってしまったのだと言います。
そして現在この男性は重体化が進んでいるとのこと。この一連の流れを見ても、日本の闇の深さが伺える事象ですよね。
ネット上ではこの男性が叩かれているが、ハッキリ言ってこの男性は被害者と言えるのでは無いでしょうか。ちゃんと受診してるのにまともな検査を受けることができなかったと言うのも真相は定かではありませんが、2つの病院へ診察に行って単なる肺炎としか診断されなかったのは事実のようです。
また、一番罪深いのは、発熱している状態の男性をそのまま出張させた企業側では無いだろうか?
現在の40代くらいであれば、まだ日本の働き方として根性論や忍耐力などが重視されていた時代もご存知なのでしょう。少しくらい無理をして働くのが美徳。みたいなところがあり、そう言った働かせ方をする企業がいまだに多いのは事実ですよね。
以前とある中小企業でエンジニアをしていた私の友人は、インフルエンザの診断を受けたにも関わらず会社に出社を命じられたことが原因で退職を決意しました。
日本全体で少しずつ病気や災害の際の対応がまともになってきているように見えますが、それは目に付く一部の企業だけであり、報道されない日本のほとんどの中小企業ではいまだに旧態依然の根性論で従業員を働かせている企業がかなり多いのだと見受けられます。
ただの肺炎であっても、体力が落ちていれば重症化することもあるし、基礎体力の低い子供や老人は肺炎で亡くなることも大いにあります。普通の感覚であれば、発熱している段階で企業側はこの会社員の方を休ませるべきですし、ましてや出張させるなんて言語道断です。
と言うか取引先にも迷惑ですよね?これだけ大々的にコロナウィルスが報道されている最中に明らかに発熱していて体調が悪そうな人を寄越されても、商談どころではありません。
もし中国国内で同じような行動を取れば、この男性は死刑に値します。

発症している時点で新幹線のような不特定多数と濃厚接触し、かつどこまで広がるか分からないような公共交通機関に乗車しているのですから、故意で広めようとしたと捉えられても文句は言えませんよね。
国がこれくらいしないと感染は広まるばかりです。そしてこのような状況で出張を命じた企業は社名を公開するなどして厳重に処罰すべきところでは無いでしょうか。
それを未だに『中国への渡航歴があるかないか』とか言ってる時点で後手に回っているとしか言えないですよね。
もはや新型コロナウィルスは中国の病気ではなく、日本国内の問題なのです。中国へ行ってたか、中国人と接触したかなどは関係なく、疑いがある時点できちんと検査を受けることを義務化するべきでしょう。
このように、日本は直面している問題に対して何処か『対岸の火事』として傍観する悪癖があります。それは日本という国だけでなく、日本人 一人ひとりに言えることでは無いでしょうか。
『新型コロナウィルスが流行しているみたいだけど、自分は中国に行ったことないから大丈夫』
『日本人の患者が増えてきたけど、新型コロナウィルスは中国の問題だから大丈夫』
『我が社の社員が発熱してるけど、大丈夫そうだから出張させてもOK』
これらの判断は、全て自分では判断できないけど、まさかそんなことは無いだろうから、大丈夫だろうと外部要因に責任転嫁したことによって発生した誤った考え方です。
肺炎状態で出社した男性にも問題はあるものの、当然勝手に休むことは許されませんから、会社の判断ということになりますよね。そこで会社が強制的に出勤停止命令を出していれば、少なくとも彼はスーパースプレッダーになることはありませんでした。
昨年9月ごろ、台風で電車がほとんど動いていないのにまるで『参勤交代』のように行列を作って出勤するための電車待ちをしている人々が話題となりました。

オーストラリアでは昨今の異常気象で豪雨の際には当然のように休校や出勤停止命令が出ているのですが、日本の企業は『朝早く起きて交通情報を確認するように』 という命令を出したり、電車が動いてなくて遅刻したら 『始発でわかってたんだから動くまで歩いたりした?』などと言われるのが実情です。
しかもここまでやって、労働生産性でオーストラリアにボロ負けしているのが今の日本です。

OECD加盟国の労働生産性では、オーストラリアが12位に対して日本は21位。時間あたりの労働生産性ではオーストラリアが15位に対して日本は20位と、どちらも平均にも満たず、日本はG7加盟国では最下位という不名誉な記録となっています。
健康な日本人ですら生産性が悪いというのに、肺炎を患った人間を働かせても生産性なんて向上するわけがないですよね。
『働き方改革』と言ってもその実ただの人件費カットの大義名分にしか利用されていませんし、本当に日本という国が間違った方向に全力を注いでいることがよくわかる事例と言えるでしょう。
そんな舵取りが間違っている企業が大半の国、ひいてはそのような日本企業に我々投資家がいくら投資をしたところで、生産性が飛躍的に向上するわけでもありません。
日本企業は17年度にROE(自己資本利益率)が初めて10%を超え、18年度も9%台後半と過去最高の水準にあるものの、世界の主要国・地域ではここでも「最下位」。世界全体のROEは13%で、米国は18%、欧州13%、アジアも10%超となっているのが現実です。
投資家がたとえ何兆円の投資をしたとしても、根本的に生産性が悪いので、投資冥利がないのです。だって舵取りが間違っているんですから。
極端な例え話をすると、日本企業は投資家からかき集めた資金で、一流の航海士と豪華客船を揃えてエベレストの登頂を目指しているようなものです。お金のかけ方と努力のベクトルが根本的に間違っているのです。
それに対して、一流の航海士と豪華客船を武器にブルーオーシャンを突き進んでいるのが米国と米国企業だと言えるでしょう。
豪華客船に乗り込んだ我々投資家は、エベレストの山頂を目指すべきでしょうか?それとも大海原でブルーオーシャンを満喫すべきでしょうか?どちらが豪華客船にとっての適材適所かは言わずもがなですよね。
日本企業は大企業から中小、零細企業に至るまでおおよその企業は努力のベクトルが誤っています。だからこそ成長しない国になってしまっているのです。
そしてこういった日本企業の対応を見るたびに、今後も成長性が期待できるような国とは思えません。日本企業に投資するならもっと成長性のある国、労働生産性がG7で圧倒的に高い、米国に投資するのがベストだと私は考えているのです。