博報堂生活総合研究所は、昨年11月に実施した、全国 20~69歳の男女3,900人を対象に「お金に関する生活者意識調査」の結果を発表いたしました。
この調査は、前回2017年11月に実施した調査と基本的に同じ設問を聴取することで、2年間で生活者意識がどのように変化したのかを探っていくと言う目的のアンケートとなっています。
今回の調査結果によると、「キャッシュレス社会」に対する意識が大きく変わっていることが見受けられる。前回、2017年に調査した内容と比較すると、「キャッシュレス社会」に賛成63% : 反対37%となり、2年前の調査から賛成が14ポイント増加し多数派となりました。
また、男性:59→69% 女性:39→57%と、男女ともに大きく賛成票を得たばかりでなく、20~60代の全年代で賛成が反対を上回ると言う快挙を達成しました。

まだ、現金決済にこだわる人もいるようだが、全世代から過半数以上の支持を得ていると言うのは非常に素晴らしい進歩だと思います。
私も基本的には現金支払いはせず、以前はクレジットカードで支払える場面であれば、例え数百円んだろうとクレジットカード支払いをしていました。ただ、iPhone7になって、『Apple Pay』が利用できるようになってからは、基本的には『iD』か『QUICPay』での支払いが増えましたね。
ですが、今回キャッシュレス決済が過半数の賛成票を得るに至った理由は、この2年間で爆発的に広まったコード決済が牽引しているようです。
個人的にはコード決済の方が僅かながら時間がかかるので、Apple Payなどのタッチ式のキャッシュレス決済方法がもっと主流になって欲しいところではあるのですが、とりあえず一般人の間にキャッシュレスの便利さとお得さが広まってきた感じはありますね。
さて、キャッシュレスが広まることによって、最も恩恵を受けるのは、米国の決済ネットワーク大手、ビザ(V)やマスターカード(MA)といった企業です。
ロイター通信が先日公開したコラムでは、次の1兆ドルクラブ入りの個別企業は、ビザやマスターカードといったクレジット決済会社かもしれないと言うことだ。
クレジット・デビットカード大手ビザとマスターカードの株価は、いずれも過去1年間に約50%も上昇。1月30日時点の時価総額はビザが約4490億ドル、マスターが約3240億ドルで、米S&P500種総合株価指数の中でそれぞれ7位と11位に付けている。
また、モフェットネイサンソンのシニアアナリスト、リサ・エリス氏によると、中国を除く世界で、消費者の買い物に占めるデジタル決済の割合は、2010年の28%から現在は43%に拡大し、「まだ世界中に浸透するには5年から10年はかかる」としている。
さらにエリス氏によれば、クレジット・デビットカード市場のシェアはビザが60%、マスターが30%で、2社で約9割を占めており、3位のアメリカン・エキスプレスは8.5%と後塵を拝しているのが現状だと言う。
このような情勢で、さらにキャッシュレス社会が世界中に浸透し、誰もが皆現金を持たずに生活できるようになった時、ビザやマスターカードへ投資している投資家は大きなリターンを得ることができるのではないだろうか。
もちろん、楽観的な事柄だけではなく、悲観的な見方もできなくはない。日本でキャッシュレス化が進んだ大きな理由は、前述の通り、コード決済なのだが、つい先日、コード決済の雄であるPayPayが、1月31日より住信SBI銀行の口座から直接チャージすることができるようになりました。

住信SBI銀行は、ネット銀行の中でもトップクラスに人気があり、口座を有しているユーザーも多い。かく言う私もメインバンクとして利用しているが、そのSBI銀行から直接PayPayに入金できるようになれば、クレジットカードを経由せずキャッシュレス決済が可能となるので、当然ビザやマスターカードの利益とはならないのである。
それだけでなく、このまま不景気に突入すれば、景気の影響をモロに受けるビザやマスターカードが暴落するのは必至で、リーマンショックの際にはビザの株価は41%以上下落したと言う事実は重く受け止めなければなりません。

とは言え、ビザも手をこまねいている訳ではありません。先日、ビザはフィンテック企業のPlaidを買収しました。

まだ創業から10年も経っていない企業に53億ドルと言う桁違いの価格での買収となりましたが、Plaidのサービスはすでに、米国内ではユーザーと金融機関をつなぐ最高峰のプラットフォームとして機能しており、ビザとのシナジーはこれから期待大といったところでしょう。
それに、いまだにやはりキャッシュレス決済の主役はクレジットカードであり、私が利用しているApplePayなどのタッチ決済も基本的にはクレジットカードと紐づけているため、一定の利用者が居る限りは何もしなくても手数料収入が得られます。ビザとマスターカードのビジネスモデルはまさに盤石と言えるのではないでしょうか。
ビザやマスターカードが今後数年以内に1兆ドルクラブ入りを果たすかどうかは定かではありませんが、2社がこれまで長きにわたってきて築き上げてきた決済ネットワークと言うプラットフォームの需要は今後さらに高まり、これらの2社の株価は長い目でみれば、さらに右肩上がりに成長することでしょう。
キャッシュレス決済の主役は今のところクレジットカードであり、これからもしばらくはビザとマスターカードの優位性は以前ほど強固ではなくとも崩れることはないだろうと見ています。