『投資の神様』ウォーレン・バフェット氏は29日、自身が会長を勤めるバークシャー・ハサウェイ傘下のBHメディアと同社が発行する日刊紙30紙をリー・エンタープライゼズに現金1億4000万ドル(約152億円)で売却したと発表しました。

しかも買収先のリー・エンタープライゼズは、買収代金をバークシャーから借り入れており、年利9%でリーに5億7600万ドルを融資したとのことです。
バフェット氏は著名な経済紙ワシントン・ポストの大株主として、10年ほど前まで社外取締役を兼任するほどでしたし、かつてのバフェット氏は『ネット時代になっても新聞はなくならない』と言っていました。

ですが、ここ数年は新聞事業への投資を縮小していましたし、今回バフェット氏が新聞事業から撤退すると言うことは、新聞業界がオワコンとみなしたと捉えられるでしょう。まあ、バフェット氏はより良い投資案件があれば積極的に乗り換えることも厭わない方ですので、新聞事業が”永久保有”する価値がなくなってきたと言うのが本音なのでしょう。
さらに、バークシャーは昨年末の時点で12兆円の現金を持て余しており、『素晴らしい投資案件』に巡り合えないでいたのですが、リー・エンタープライゼズに5億ドル超の融資をすることで、BHメディアから、ほぼノーリスクで9%のリターンを得ることができるのと同義です。
もちろん、リー・エンタープライゼズが借入金を返せなくなると言うリスクはありますが、融資の段階で当然厳格な審査をしているでしょうし、そもそもリー・エンタープライゼズとバークシャーは信頼のおけるビジネスパートナーでもありますから、借入金が返ってこないなどと言う心配はほとんど無用と言えるのではないでしょうか。
新聞事業はここ数年、広告収入の落ち込みが目立っており、その原因の最たるものがやはりインターネットと各種ハイテク企業が持つ巨大なプラットフォームだと言えます。
今の時代、新聞よりも鮮度も質も高い情報を得るための方法などいくらでもあります。twitterなどのSNSやネットニュースによって、世界中の情報が数秒から数分で全世界を駆け巡る時代です。
もちろん新聞にも新聞の良さがあるのでしょうが、私はほとんど読んだことがないです。ウォールストリートジャーナル(WSJ)は読んでますが、電子版ですから基本的にアプリかたまにPCで読んでいるので、新聞という感覚ではありません。質の高いネットニュースみたいな感覚で勉強させてもらっています。
さて話は戻りますが、ウォーレン・バフェット氏と言えば『永久保有』投資家として一度買った株は手放さないことで有名だと思いますが、意外とバフェット氏は銘柄の取捨選択をすることが多いです。近年で最も顕著だったのが、2011年に初めてハイテク企業として、IBMに投資を初めて6年後の2017年にはIBMから完全に撤退したことです。
これは完全にバフェット氏も『目論見が外れた』と公言しており、何でもかんでも永久保有していると言うわけではないことがわかります。
彼の言う永遠とは、『自分が思った通りの成長をし続けている限りは永遠』と言う意味なのではないだろうかと私は考えています。
さて、バークシャーはバフェット氏の思惑通りの成長をしてくれない新聞事業を手放して、現金収入と、ほぼノーリスクの年利9%と言う債権を手に入れたのです。これはかなり良いディール(取引)だったのではないかと思います。
バフェット氏が新聞事業から撤退すると言うところがまた、一つの時代の終焉を見たような気がします。2020年代もおそらくインターネットが強い時代になるでしょうが、10年もあれば想像もできなかったような変貌を遂げるのが今の時代です。その時代の荒波に新聞は呑まれていったと言うことでしょうね。
そんな時に、これはもう成長期待ができないなと感じれば思い切って持ち株を整理すると言うのも手だと思います。ただし、まだ成長している段階で売るのは禁物です!

株式投資は20年、30年と言う長いスパンで投資し続けるのがベストなのは私も何度も言っていますが、モノによっては20年後、30年後も残っているのかどうかが予想できないものもたくさんあります。
今の30年前から現在までの文明の進歩よりも、今から30年間の方が格段に早くなるだろうとは思いますし、30年後にどの企業が時価総額トップになるほど成長しているのかは誰にもわかりません。
私もこの10年弱で一度しか株の売却をしていませんが、これ以上個別株の銘柄数を増やすのはイヤですから、次に新規投資をする場合はもしかしたら既存の個別株を売却してからと言う形をとるかもしれません。
銘柄の入れ替えをしていく中で、やっぱりこの銘柄は”永久保有”なんだなと言うのが改めて理解できてくるタイミングもあるのではないでしょうか。20年後、30年後にご自身のポートフォリオを振り返って、『あぁ、やっぱりこの銘柄は永久保有だったな』としみじみと思うのが本当の”永久保有”銘柄なのではないでしょうか。