今月13日、決済ネットワーク最大手のビザが、米フィンテックのユニコーン企業『Plaid』を53億ドルで買収するという報道がありました。

Plaidは創業8年目の非公開企業で、 決済機能を有するスマートフォン向けアプリやサービスと、ユーザーの銀行口座を結びつけるフィンテックサービスを提供している企業だと言う。
しかし、Plaidの2019年度の売上高はわずか1億ドルから2億ドル程度だったとのことですから、53億ドルでの買収は破格と言えるのではないでしょうか。
なぜそうまでしてビザは同社の買収に乗り切ったのでしょうか。それは恐らく、同社サービスの成長性が著しいからだと思われます。
同社は2019年度中に 顧客企業数を2600社に倍増させ、英国やスペイン、フランス、アイルランドなどに事業を拡大しており、今後も拡大が見込まれている上に、同社が提供する個人間送金アプリの『Venmo』や海外送金サービスの『Transferwise』などのアプリやサービスと銀行口座を連携させるシステムは、米国内でもすでに銀行口座保有者の4人に1人は間接的に利用している状態と言われています。
つまり、Plaidのサービスはすでに、米国内ではユーザーと金融機関をつなぐ最高峰のプラットフォームとして機能しているのである。
ビザが53億ドルという破格の値段で同社を買収したのは、その成長速度に加えてPlaidのサービスがビザが持つ決済ネットワークとシナジーを起こしてビザの更なる成長に寄与してくれると考えたからでしょう。
さらに言えば、このまま成長すればPlaidはどんどんと巨大化し、ビザのライバル企業として君臨していたかもしれません。
となると、まだ小さい今の段階でPlaidのサービスと将来のライバルを逆に自社に取り込む姿勢は、ビザにとってプラスであると考えられ、将来性を考えればむしろ53億ドルでも安い買い物だったかもしれません。
もちろん将来的にどうなるのかは分かりませんし、結果的に53億ドルは高すぎたと言う結論になるかもしれません。しかし、私は好感が持てるニュースだなと感じました。
クレジットカードと言えばVISAカードと言われるほど、ビザにはワイドモートなブランド力があり、マスターカード(MA)の追い上げがあるとはいえ、未だにクレジットカード決済売上高のシェアの過半数を誇るなど、圧倒的な業界1位の座にあります。
ビザ自身もまだまだ成長途中のグロース株に分類され、今回のように新たな決済サービスの可能性を広げるための投資を積極的に行うなど、業界1位の慢心などは一切見られません。
私自身、ビザは主力銘柄として20歳の頃から保有しているので、多少の色眼鏡はあるかもしれませんが、例えそうだとしても、ビザのビジネスモデルの安定感と収益性の高さ、そして成長性の高さを鑑みると、魅力のある銘柄であることに間違いはないのではないかと感じます。
ライバルとなるはずだった仮想通貨もセキュリティの面から、まだ実現までには程遠く、代わりにここ数年の間に一気に広まった『QRコード決済』もクレジットカードと連動している方も多く、結果的にビザに手数料が入るという状況です。
懸念があるとすれば、今後不景気になって人々が購買行動を控えた場合、それに伴って手数料収入が減少するというのはあるでしょう。決済ネットワーク企業ですから、景気敏感株という側面はあります。ですがそれでも買い物を完全に控えることなどできませんし、クレジットカードを使って決済する人々は世界中から居なくなることはないでしょうから、ビザやマスターカードといった企業には、不景気で株価が低迷する場面があれば強気で買い増ししたいところです。
とにかく私は、今後もビザを売却する予定は今のところありませんし、今回の買収で、今後も業界1位の座を盤石なものとするだろうと感じましたので、引き続きチャンスには少しずつ買い増ししていきたいと思います。