自転車で爆走する老人という姿がキャラ立ちしているせいもあり、メディアに引っ張りだこの優待おじさんこと、桐谷広人氏が株主優待を受けた方がいい理由について語った記事を読んだのですが、「ホントに?」というような内容でした。

多くの日本人にとって、株式投資といえば、モニターの前でカチカチとマウスをクリックし続けるいわゆるデイトレードの印象が強かったのですが、桐谷さんがメディアに露出して以来、株主優待狙いの投資が一定数の支持を受けるきっかけとなりました。
私からすれば、どちらも株式投資としては微妙と言わざるを得ない手法ではあるのですが、メディアの影響力の高さというのは恐ろしいものですね。
今回の記事を読んで私が引っかかったのは、以下の部分。
「配当の場合は、業績が悪化すると減配(配当額の引き下げ)配当は大口投資家に有利優待は小口投資家の味方や無配(配当の支払い停止)となる可能性があります。しかし、株主優待の場合は業績が多少悪くても継続するケースが多い。しかも、配当は保有株数が多いほど得られるお金が増え、大口の投資家に有利。これに対し、株主優待は保有株数が多くても優待内容には差が生じないケースが多く、最低単位(1単元)の株数を保有している小口投資家に有利だと言えるでしょう」
配当金が大口投資家に有利という点は当然です。持分に応じて配当金を支払うというのが資本主義の原理原則ですからね。それは良いとして、その後の株主優待の場合は業績が悪くても継続するケースが多いっていうのは、本当かな?という印象を受けます。
当然ですが、配当金と同様に株主優待も『改悪』されるケースは多々あります。例えば、東証一部上場の不動産会社オープンハウス(3288)は、昨年8月に株主優待である『QUOカード』と自社が仲介または自社グループが販売する住宅購入時に10万~30万円を『キャッシュバック』の廃止を発表しました。
オープンハウスのケースでは、これと同時に業績の上方修正と1株当たり5円の増配を発表し、これからは株主優待ではなく、増配で株主に還元するという、本来あるべき株式投資に近づいたのは好感を持てました。
しかし、『株主優待目当て』で投資していた乞食投資家からは、『優待廃止だと!改悪だ!』という的外れな批判を受けることになりました。上方修正と増配をし、あるべき株主還元の形に近づいているというのに何が改悪なんでしょうか?まあ、100株しか持ってない乞食投資家からすれば、増配しても入ってくる配当金は500円なのに対して、QUOカードなら3,000円分くらいは貰えてましたからね。改悪とも言えるのかもしれませんが。
この発表を受けて株を売り払った小口投資家も多いかと思いますが、その後の同社の株価は順当に成長。一時と比べれば落ち着いたものの、昨年8月からわずか5ヶ月で株価が40%以上上昇している。

優待廃止で売り払った小口投資家ざまぁwwwwwwwww
と言わざるを得ない結果になっているのである。しかしこのケースではまだマシと言える。
株主優待改悪の歴史といえば、代表的な銘柄は『遊べる本屋』という独自のコンセプトで有名なジャスダック上場企業のヴィレッジ・ヴァンガード(2769)である。同社は本屋と銘打っているが、独特な輸入雑貨などがウリで、店舗に足を運ぶのが楽しくなるような経営をしている、ある意味では『ワイドモート』とも言える独自性を持った企業です。
同社の株主優待はかつて、『ヴィレッジ・ヴァンガード』で利用できる無料券であり、その額が100株しか保有していなくても『10,000円分の無料券』という破格の優待が有名だったのですが、2016年以降、優待券が改悪を続けており、今は無料券から割引券へ格下げされるなどで、一気に乞食投資家たちが手放したのです。
その結果、株価は当時の4割減。今後も2016年以前の株価に戻る見込みはなさそうだ。

このように、個別銘柄をみていけば株主優待が改悪するケースなんてたくさんありますし、そもそも株主優待中心の生活をするのは、本来の株式投資からかけ離れています。
株式投資とは本来、『人生を豊かに過ごすための手段』であるべきなのですが、彼のような株主優待中心生活をしていると、株主優待の期限切れを防ぐためにあちこちに自転車で駆け回り、今食べたい訳でもない牛丼を食べたり、欲しくもないモノを買ったりする必要が出てくるのです。

桐谷さん自身も、優待でもらった食品の賞味期限を切らしまくっていたり、一室丸々段ボールだらけになったりととても豊かな生活を送っているとは思えない。



あなたは、株式投資を通じてこのような老後を送りたいのだろうか?
株式投資をするのであれば、自分でよく考え、自問自答しながら投資にあたるべきだということを彼は身を以て教えてくれているのかもしれない。