日本でも有名な『レディーボーデン』は、一昔前までは日本でも高級アイスの代名詞のような存在でした。我々よりもかなり上の世代ではありますが、何かお祝い事があった時に『レディボーデン』のバニラアイスが食べられると言う人も多かったのではないでしょうか?
その『レディボーデン』の製造元であり、アメリカの老舗牛乳メーカー『Borden Dairy(ボーデン社)』が今月6日に破産宣告をしたことがネット上で話題となっています。
ボーデン社が発表したリリースによると、同社は、事業の継続が不可能な債務超過のため、現在の債務負担を軽減するための財務再編を追求するとのこと。破産の原因となった債務超過は、主に生乳のコスト上昇と牛乳市場の悪化が理由だとのことです。
日本では、『レディボーデン』はロッテが製造販売しており、引き続き販売されるとのことですが、日本全体で見ても、牛乳や乳製品の消費量が減少しているのは確かなようです。
農林水産省の統計によると、飲用牛乳の生産量は1996年をピークに少しずつ減少しており、2013年にはピーク時の3割減となっていることがわかります。

私自身も、乳製品を消費することはたまにはありますが、毎日消費するほどではないですし、牛乳をそのまま飲むと、ほぼ確実にお腹を壊すので、絶対に飲まないようにしています。
最近では、学校給食で必須だった牛乳を廃止している自治体も出ているようで、新潟県三条市では、2014年頃から、地元の米食を給食に取り入れるため、パン食を廃止して米食のみの給食に変更したため、『ご飯には合わない』牛乳を廃止したと言うことです。
最近では、牛乳の栄養価の高さはあくまで牛に対してであり、あまり人間の体には合わず、牛乳は栄養価の吸収率が悪いと言う研究結果も報告されており、牛乳は体に良いと言う常識が覆されてきています。
また、『牛乳離れ』と言う理由だけでなく、アイスクリームの『レディボーデン』には、ゼネラル・ミルズ(GIS)傘下の『ハーゲンダッツ』と言う強力なライバルが存在しています。最近では小売店で販売しているのを見かけるのは、ほとんどハーゲンダッツではないでしょうか?
特にレディボーデンの代表とも言える大きなサイズは、近年の”核家族化”にはそぐわず、お皿に移すのも面倒くさいと言う層もいるでしょう。ハーゲンダッツの代表と言える一人で1個消費できるサイズ感のそのまま食べれるカップアイスが人気になる理由もわかります。こう言った戦略の違いが格差を生み出した原因ではないでしょうか。
そしてそのゼネラル・ミルズも決して経営状況が好調とはいえず、株価もここ数年は伸び悩んでいます。

日本企業を見ているとお分かりになるかと思いますが、食品メーカーや外食産業などはヒット商品を出したとしても、なかなか繁栄が長続きしないものです。それはやはり、消費者の志向や好みの変化によるものだと考えられます。
今の時代、世界中のブームがネット環境に乗ってすさまじい速度で世界中に届きますから、ブームの賞味期限がどんどん短くなっています。食品・ファッションなどは特にそのブームに乗り続けるのが難しいですよね。
つまりそれだけ、食品関連企業というのは、あまり長期投資向けではなく、ボーデン社のような老舗であっても変化に対応できないメーカーは廃れていくものなのです。
と言いつつも、私自身、コカ・コーラ(KO)とマクドナルド(MCD)と言う食品関連企業に2社も個別投資しているのですが、この2社も決して安泰だと思っている訳ではありません。
ですが、私がこの2社に投資しているのは、ある共通点があるからです。
それは、私の好きな『ロイヤリティ収入』と『参入障壁の高さ(ワイドモート)』を有しているということです。
この2社に共通して言えるのは、ただのメーカーや外食産業ではなく、簡単に言えば『製品の作り方マニュアル』を販売してその特許料で利益を上げているということ。
これはもちろんその製品自体に魅力が無ければ成り立ちませんが、世界中どこに行っても見かけるマクドナルドの店舗では、今日もマクドナルドのハンバーガーをセットのコカ・コーラで流し込んでいるユーザーの姿を見ることができますよね。
この状況を根本から覆すことができる企業が現れない限り、マクドナルドとコカ・コーラは食品関連企業とは言え、優位性のあるビジネスを有している優良企業と言えるのです。
食品関連企業は流行り廃りが激しいものの、『食べること』自体の需要が無くなることは無いですから、独自のビジネスモデルや圧倒的なブランド力を有していれば投資対象としては魅力的だと感じます。
そして、『レディボーデン』のように、かつてはブランド力を持っていたとしても、時代の変化によってそれが弱まっているというのは、消費者として感じ取ることができるはずです。ブランド力の低下が一時的なモノか、それとも恒久的なモノかという判断は難しいかもしれませんが、これからも長く続くであろう『ブランド力』と『ビジネスモデル』を有しているかどうか。食品やファッションという変化の激しいセクターの企業に投資する場合は特にそれらの要素が重要になってくるのではないかと思います。