マネーポストに興味深い記事が投稿されていました。

私も散々記事にしていますが、日本の外食チェーンはたった10円の値上げでも、絶望的なまでの客足減に見舞われることがあります。特に『吉野家』や『松屋』と言った牛丼チェーンなど、デフレを象徴するような激安外食産業では、10円の値上げや、ワンコイン(500円)で食事ができるか否かと言う点は死活問題となり得ます。
例えば、ロイヤルホールディングス(8179)傘下の天丼チェーン「てんや」が昨年1月に看板商品の『天丼並盛』を500円から540円に値上げするなど、6種類のメニューを10〜50円値上げしたところ、それ以降既存店客数、既存店売上高ともに大幅なマイナスとなったことが話題になりました。

デフレも極限まで進んだ2000年代前半には、マクドナルドのハンバーガーが59円になったり、商品を買うと無料でハンバーガーをもらえると言う『引き換え券』を貰えたりと大盤振舞いの時代がありました。当時、小学生から中学生の頃で、身体もデカかった私にとっては最高の時代でした。チーズバーガーも80円くらいだったような記憶があるので、近所のマクドナルドへ行ってチーズバーガーとハンバーガーの組み合わせで5個くらい買って平らげてました。それでも500円でかなりのお釣りが来ました。
しかし、このように安さだけを求めてしまうと当たり前ですが、企業は利益を生み出すことができません。吉野家の牛丼が380円ですよ?冷静に考えておかしいですよね。実は私は一度も吉野家に行ったことがないのですが、ライバル店の松屋には何度か行ったことがあります。
あのクオリティで500円未満で食事ができるのは改めておかしいです。比較的ランチが安い傾向にある大阪市内でも、これらの激安牛丼チェーンにはサラリーマンが行列を作るほど人気がありましたからね。
しかも激安であるにも関わらず、激安外食チェーンに通うような客層はまともに定価では消費はしてくれません。ソフトバンクの『SUPER FRIDAY』キャンペーンを利用してタダで吉野家の牛丼や丸亀製麺のうどんを食べたり、半額キャンペーンの時にしか訪れないと言う客も多いでしょう。
この記事にあるように、安さだけを求める客は本当に「お客様」なのか?と言う意見には本当に共感せざるを得ないです。安さだけを求める客は、リピーターにこそなれ、優良な顧客とはなり得ません。値段しか見ていないような顧客層は、ちょっと値上げをすればモンスター化する乞食ばかりで、優良客と言うには程遠いです。値下げ合戦の先に待ってるのは、無料ボランティアの炊き出しです。冷静に考えて、企業がそんなことやってる場合ではないですよね?
最近、外国人観光客が増えたのも、ハッキリと言えば日本が『物価が安くてお手頃な国』へと成り下がったからです。確かに世界でも有数の歴史があり、文化も違うためそれに興味を持ってくれるのは大変ありがたいことですが、適正なインフレで賃金が正常に上がり続けている諸外国にとっては、日本はすでに物価が安いので気軽に旅行しやすい、他のアジアと同等の国になっているのです。事実、日本の物価はシンガポールとはほとんど差がなくなって来ましたよね。そして今後数十年の間にアジア諸国の中でもとりわけ物価の安い、衰退した国家になっていくだろうと見受けられます。
100円ショップなどへ足を運んでみても、陶磁器風の食器なんかは、国によっては数千円で販売できそうなクオリティですよね。せっかく世界でもトップクラスの技術があってもそれを販売価格に転嫁できないと言うのは、ハッキリと言って『経営層の怠慢』です。
モノづくりの技術があってもPRやマーケティングといった分野がボロボロなので、値段を上げることができず、結局それに何十年も慣れてしまった国民が少しの値上げにもアレルギー反応を示すようになってしまったのです。
もちろん、消費者として安くで物が買えるのは大変喜ばしい面もありますが、日本経済と言う大きな話をすれば、なんとも将来性のない国になったものだなと思う次第です。
投資家としてみれば、そんな国に投資するのはハイリスク・ローリターンの最悪の案件だと思います。日経平均がここ数年で一気に上昇したことは確かですが、それでもいまだに30年前の水準にすら戻っていない。

しかもこの数年の日経平均の上昇は日本政府によるETFの爆買いによるものでした。決して景気が良くて上昇しているわけではない。それゆえに企業は内部留保を貯め続け、従業員は低賃金で奴隷扱いを受け、それをみた次の世代は会社への貢献意識が減退し、生産性はさらに悪くなる。

『風が吹けば桶屋が儲かる』と言うことわざがあるが、それになぞらえて言うと『客がごねれば日本が崩壊する』と言った感じだろうか。あなたが低賃金なのは、あなたが値上げを拒むからです。適正なインフレが起きない限り、賃金が増えることはまずあり得ません。
先に給料を上げろ!と言う自分勝手なさもしい声が聞こえそうですが、企業も『無い袖は振れない』ですから、先にインフレを起こして利益を上げざるを得ないのです。仮にあなたの勤める会社が、従業員の賃上げのために借金や第三者割当増資などを実施したら・・・あなたはその会社で働きたいと思いますか?
日本の外食チェーンに投資している少数株主たちも、これまた無料クーポン欲しさの乞食投資家ですから、日本の外食チェーンは特に終わってると思います。今後倒産危機にさらされる外食チェーンは一気に増加し、いきなりステーキ!の『肉損ショック』のような出来事が、増えてくるんじゃないかなと本気で心配になりますね。

投資家や従業員として、日本の外食チェーンに関わるのは、個人的には避けたいところです。あまり詳しくは書けませんが、斜陽産業の企業で経理をやることのつらさは私自身、身に染みて理解しています。
国民が少々の値上げを寛容に受け入れられない限り、日本企業に投資するのは、あまりオススメできたものではないと言えるでしょう。