ペッパーフードサービス(3053)が展開するステーキ専門店、『いきなり!ステーキ』が案の定、危機にさらされている。

社長が直筆で、『客が来ないと閉店することになる』と上から目線で『お願い』をするほど、危機的な状況だったのはまだ記憶に新しいが、年末年始にかけて26店舗。計44店舗の閉店を予定しているという。

これを受けてか、今日は株価が低空飛行。日経平均がほぼ横ばいの中、前日比1%ちょっとの下落となりました。

もともと11月半ばには 急すぎた店舗拡大により 出店計画の見直しを余儀なくされており、44店舗の閉鎖を発表していたのだが、ここに来て突然年末年始で全国26店舗の店じまいをすることを随時発表しているのである。
しかも、その中には今年4月にオープンしたばかりの「浜松三島店」や、満を持して投入した牡蠣を売りにする「虎ノ門店」「銀座六丁目店」も対象となっており、改めて事業の無計画さと顧客の求めるモノとのミスマッチングさが浮き彫りとなった形です。
この凋落ぶりには、SNS上でも、今のうちに行っておかないと、潰れてしまうかもしれないという危機感が募り、いきなり!ステーキ独自の電子マネーである『肉マネー』が、さながら令和の取り付け騒ぎのように拡大しているのである。
この騒動により、いきなり!ステーキは肉を売っても売っても、キャッシュインフローが期待できず、このままいけば本当に倒産しかねないとも言い切れない状態なのである。
そもそも、以前も取り上げたように、いきなり!ステーキの根本的な問題は、顧客が求めるモノとのミスマッチを受け止めることができないワンマン経営者によって経営が牛耳られているという状況です。
私は、いきなり!ステーキに行って、割高な値段を払って脂身の肉を食べたいとは思いませんし、ましてやステーキを食べに行こうとしているのに、牡蠣を勧められても、今はそんな気分じゃないとしか思えません。ショートケーキが食べたくて和菓子屋に行く人が居ないように、牡蠣が食べたくてステーキ屋に行く人はいないでしょう。コンセプトがブレブレだから、わずか8か月で閉店することになってしまうのです。
そして、同社は、経営判断のお粗末さを従業員やユーザーに責任転嫁し、昭和以前の誤った根性論と偏った価値観を押し付けているに過ぎません。この前の貼り紙騒動で完璧に顧客に見放された感はありますね。ちょっと考えれば分かりそうなものですが、リアル店舗での顧客相手のビジネスで、炎上商法はあまり得策ではありません。
2014年頃から、外食界の王者であるマクドナルドが深刻な客離れに窮したことがありました。元々は、チキンナゲットに使用されていた鶏肉の消費期限が切れていた問題など、闇の部分が明るみになったことが原因でした。
しかもこの頃のマクドナルドは、あろうことか高級路線のバーガーの販売を連発し、顧客のニーズに応えることができていませんでした。しかしその暗黒期を乗り越えて、今はまたそれなりの価格で期待通りの味を提供してくれる、安定したバーガーショップに戻ってきたのです。
マクドナルドにも、いきなり!ステーキにも割高でも通うという客層は皆無であり、高いなら同じ値段でもっとマシな店に行くか、もう少しお金を出して、もっとおいしいハンバーガーやステーキを味わいたいと考えるのが普通です。
今回も倒産の危機が迫っていて、今までチャージしてきた『肉マネー』が紙くずになるのが許せないというがめつい客層が騒いでいるのであり、肉マネーが無ければ、いきなり!ステーキは見向きもされず深刻な客離れが加速していったことでしょう。
まあ、肉マネーが無ければ、いきなり!ステーキはタダで肉を振る舞うこともなかったので、どちらが良かったのかは何とも言えないところですがね・・・
どちらにせよ、今の段階で同社には投資冥利があるとは思えず、業績改善の最善の一手は『社長の交代』ということになるでしょう。
外食産業に投資したいのであれば、大炎上して倒れかけのステーキ屋より、不死鳥のごとくよみがえったマクドナルドの方が長期的に見て投資冥利があると私は思います。
もちろん、本部に収益を搾り取られる運命にある日本マクドナルド(2702)ではなく、元締めとなる米国のマクドナルド(MCD)の方ですけどね。
日本の外食産業に投資するということは、10円の値上げにも過剰に反応する貧乏人と、タダ飯を食べるためにわざわざ一単元だけ投資して、投資先の利益を圧迫する乞食個人投資家との醜い争いであるということを肝に銘じておく必要があるでしょう。