かつて、『百貨店』が全盛期だった時代、業界の盟主として君臨し続けてきた企業があります。その企業こそ『そごう』。現在はセブン&アイホールディングス(3382)の傘下に甘んじているそごう(正確には、株式会社そごう・西武)ですが、バブルが崩壊するまでは、ものすごい勢いで成長していました。

では、なぜそんなそごうが、今や凋落しセブン&アイの傘下に居るのかと言うと、そごうが『安定的なビジネスモデル』に胡坐をかいてしまったからと言えるでしょう。
そごうが展開した独自のビジネスモデルは 「百貨店のチェーン化」 という独立法人化でした。当時は現在のように連結決算の重要性などが説かれていない時代でしたので、 地域密着の法人が出店することによって、現地の雇用も増やし、そして本店に与えるリスクも軽減できるという一石二鳥のビジネスモデルでした。
だがしかし、この独立法人化には大きな落とし穴がありました。それが、独立法人化することによって、グループ全体の経営が不透明になること。独立法人化によって、いわば好き勝手することができる各地域のそごうは、どの店舗が利益を上げて、どの店舗が赤字経営なのかすら良く分からない状況になっていたのではないだろうか。
また、百貨店はそのビジネスの形態上、広大な土地を必要としますから、好景気時には土地を担保に新たな借り入れを行ってビジネス展開ができたものの、バブル崩壊とともにその拡大戦略が不可能になったばかりか、地価暴落によって既存の店舗の担保性も大きく損なわれ、債権回収もできなくなり、結果的にそごうグループが衰退する原因となったのです。
残念ながら、どんなビジネスモデルでもいずれは陳腐化し、永遠に継続し続けるものはありません。数年前には勢いのあった『いきなり!ステーキ』が今や、陳腐化したブラック企業の典型のように叩かれていることからも分かります。

そもそも、いきなり!ステーキのビジネスモデルは優位性のあるものではありませんでしたが、こうして『真新しい』ビジネスモデルは、すぐに陳腐化してしまうのが一般的なのです。
これは何も日本国内に限ったことではなく、例えばかつて『バフェット銘柄』として人気のあったクラフトハインツ(KHC)が、自社製品のブランド力の低下によって不正会計を働くまでに凋落してしまったりするなど、米国株投資家も他人事では済まないところがあります。
投資家としては、投資先の企業が『優位性のあるブランド力』を有していることはもちろん大切ですが、過去の栄光にすがり続け、胡坐をかいているような企業には投資冥利はないと判断することができるかと思います。
一方で、絶対的なブランド力を持ちながらも、別のビジネスモデルに注力し、次世代の収益の柱を育てようとしている企業は強いです。
例えばコカ・コーラ(KO)は、『コカ・コーラ』という絶対的なブランド力を有する炭酸飲料ブランドを保有しながらも、ミネラルウォーターやエナジードリンク、コーヒーにアルコール飲料など飲料業界全体を牛耳ろうとするほどの展開を見せているばかりでなく、サブスクリプションビジネスにも手を出し始めました。

そして、サブスクリプション型のビジネスと言えば、成功例として挙げられるのが、マイクロソフト(MSFT)の『Office』シリーズだろう。Officeシリーズはかつてはソフトウェアとして販売されており、ビル・ゲイツ氏が同社のCEOを退いた頃から、マイクロソフトは「時代遅れのソフト屋」というレッテルを貼られていました。
だがしかし、サティア・ナデラCEOの元で、『Office』シリーズにサブスクリプション型のビジネスモデルを採用したことで、収益性は改善。今や米国株式市場を代表する銘柄にまで成長したのです。
コカ・コーラやマイクロソフトですら、次世代の成長のために革新し続けているというのに、日本の中堅百貨店が、独自のビジネスモデルに溺れてしまったがために、そごうは凋落してしまった(実際バブル崩壊が無ければ気づかなかっただろうが)と言えるのである。
我々投資家としては、
・本業ですでに高利益率と『ワイドモート』を有している企業
だけではなく、
・本業と関連する新たなビジネスモデルを積極的に展開しようとしている
ことも、投資先としてフィルタリングするのに必要な要素と言えるのかもしれません。そして当然、
・次世代のビジネスモデルが、現在の本業と同程度、あるいはそれ以上に高い収益性を見込めるビジネスモデルである
ことも忘れてはなりません。
これらの3つの要素を兼ね備えた企業のワイドモートは強固であり、今後数十年に渡って、投資家に大きなリターンを与えてくれることだろうと私は考えています。