ペッパーフードサービスが展開する『いきなり!ステーキ』が最近話題となっている。
先日、東京都墨田区にあるいきなり!ステーキ(墨田太平店)の店頭に社長からのお願いという直筆の貼り紙をしたことがニュースになりました。
その貼り紙の中には、『格安高級牛肉』という謎のパワーワードが飛び出したり、『こっちは頑張ってる』というような上から目線の態度がネット上で炎上し、ウェルダンな仕上がりになっております。
しかも、この貼り紙を順次、全国にある500の店舗に展開しようとしているなど、馬鹿げた施策をして低迷ぶりをさらに露呈しています。

さらにこれだけにはとどまらず、従業員に対して、怪文書を送っていたことが昨日明らかになりました。あまりに長すぎて全てを抜粋することはできませんが、一部を抜粋してみると
(中略)過去の絶大な人気の実績に安心して、お客様がお店に来るのは当たり前だと考えている人はいませんか。
お客様のご来店によって支払われるご飲食の代金が皆さんのお給料になるのだと実感できていますか。
お客様は、お店に来られる判断も、行きたくない判断もお持ちです。あなたの立場でどの様なお店の常連になりたいでしょうか。賢明な皆さんは、それを理解していると私は信じています。
私がリピーターになりたい店は、私を歓迎してくれる店です。この歓迎には、心からの笑顔が伴った最初の『いらっしゃいませ!』の挨拶が欲しいです。
この店にきて良かったと思える笑顔のお迎えは、『心で思う自身の叫び』を導きます。美味しく、楽しく食事ができる願望が期待に変わる瞬間を迎えます。もし、お客様が皆さんの親、兄弟、友人であった時を想像してみて下さい。
皆さんの会社に勤めている全員でこのことを共有して下さい。『いきなりステーキ』も『ペッパーランチ』も全国に展開しています。実家が地方の方にも、同居されていない方にも、是非美味しいステーキを食べに来て頂きたいと連絡してみて下さい。社長からのお願いです。
このような怪文書を送りつけるという謎の行動。まさに末期感である。
貼り紙と怪文書を要約すると、
我々は、革新的なことをやってのけたし、やるべきことをやってるのに、客がこないのは客が悪い、でなければ従業員が悪い。もっと宣伝して客呼んでこいや!
ということですよね。このような上から目線の発想は果たしてどこから出てくるのでしょうか。
社長は『正しい いきなり!ステーキの情報を知ってもらいたい』と語るが、これが『正しい情報』なのであれば、投資家目線で見れば、かつての勢いを失った将来性と投資冥利のない企業であるという判断をせざるを得ない。

私も一度だけ、いきなり!ステーキの肉を食べてみたことがあるが、脂身が多くてガッカリしたことがあります。20代男性とは言え、アラサーですから、脂身が多いのは正直きついです。
あと、ちなみにこれは個人的な感想ですが、私は必要以上に歓迎してくる店にリピートしたいとは思いません。美味しいなと思って結構な頻度で行くようになったお店でも、顔を覚えられたそぶりを店員さんにされると途端になんか居心地が悪くなってしばらくそのお店に行くのを止めるようなあまのじゃくな人間です。
私が飲食店に求めているのは歓迎してくれるかどうかより、圧倒的に『味と質』です。もっと言えば『価格に見合った味と、安定した品質』ですよね。誰しもそうですよね。
一人数万円は下らない高級焼肉店が好評なのは、その価格を出すに値するだけの品質の良い確かなお肉を味わえるからですし、逆に吉野家の牛丼に行列ができるのは、その価格帯で食べられるモノとしては安定した品質をキープしているからです。その証拠に、牛丼チェーンはたった10円の値上げが命取りになることもしばしばあります。
飲食業界に求められているのは、『価格と品質の一致』であり、それぞれのお店はそれに見合った顧客に対してマーケティングをしているのである。決して、歓迎してくれるから行く訳ではないです。
私が大阪で働いていた時の話ですが、先輩と二人でランチタイムにスパイスカレーの美味しいことで有名なお店に初めて行くことになりました。そのお店は常に行列が絶えず、我々が行った時点でも数名並んでいました。
当時の会社はお昼休みがきっちり1時間だったのですが、数名の行列なら大丈夫だろうと思い並んで待つことにしたのですが、めちゃくちゃ回転率が悪く、お店に入った時点で20分は過ぎていました。店主は職人気質な雰囲気で接客態度も決して良くはなく、めちゃくちゃ感じが悪かったです。
さらにそこから注文を受けて待つこと30分。お昼休みがあと10分しかないという時点でやっとお目当てのカレーが出てきたのです。しかも、提供してから食べる順番まで時間をかけて指導してくる始末。はっきり言って、心の中では
(これはハズレやったなぁ〜・・・二度と来るか!)
と思っていたのですが、一口食べた瞬間、
(ウマぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!)
と感動して一気に食べ進めてしまいました。さすがに時間がなくてもったいないことに少し残してしまうことになったのですが、店主が勧めてくれた順番で食べると、また味わいが変わって美味しいのなんの!店を後にして早足で会社に戻る途中、先輩と二人で
「今度は時間がある夜にいこか〜」
と話すくらい気に入ってしまいました。そしてその後実際、何度も夜の営業時間にこのお店に通うことになりました。
この経験から見ても、外食産業が研鑽すべきは『価格と味を一致させること』であり、接客態度は二の次だと思うんです。
むしろこの時の店主の愛想の無さは、『カレー一筋の不器用な職人』という店主のキャラクターがそれこそ最高のスパイスとなってこのお店のカレーの美味しさを引き立ててくれたとも言えます。まあ、単純に50分待って限界なほどお腹が空いていたというのもありますけどね。
というか日本の飲食店は大抵の場合かなり素晴らしい接客をしてくれてますよ。大した金額も払ってないファミレスに接客態度を求める輩が多過ぎませんかね。と私は思います。
フランスでマクドナルドに行った時、注文をしようとしても店員が来ず、注文した後も、私のジュースを入れてくれるのかと思いきや、店員が目の前でそれを飲みながら他のクルーと談笑し出したのは、ものすごいカルチャーショックでした。ちゃんと注文したものが出てくるだけで、日本は十分恵まれた環境だと思います。
話がそれましたが、結局、いきなり!ステーキは『価格と味の品質の一致』という外食産業に一番求められているところから目を逸らし、経営判断のお粗末さを従業員やユーザーに責任転嫁し、昭和以前の誤った根性論と偏った価値観を押し付けているに過ぎません。
直筆の怪文書を作成している暇と資金があるなら、経営判断を見直した方がよほど将来性のあることだと思いますけどね。炎上商法やお涙頂戴のマーケティングにしても、このやり方ではすでにいる顧客に対してもマイナスイメージとなるだろうと思いますしね。
ユーザーとしてはもとより、投資家としてもこのような企業に関わるのはハイリスク・ローリターンとなりかねません。
というより、日本の外食産業自体が、デフレにどっぷりと浸かった日本人を相手に商売をしなければならないという性質上、利益率が著しく低い産業となりますので、投資先としてはあまりお勧めできるような事業ではありません。
ペッパーフードサービスへ投資している投資家の皆様が『いきなり!不景気』なんてことにならないことをお祈りするばかりです。