内閣府が9日発表した19年7~9月期の国内総生産(GDP、季節調整値)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.4%増、このペースが1年続くと仮定した年率換算は1.8%増となり、速報値の年率0.2%増から上方修正した 。
また、別のコラムでは日経平均株価が来年には3万円の大台に乗るという、まあ、年末になればありがちな記事が見受けられました。
これらのニュースを見て、「日本経済は底堅く、将来は安泰だ!」などと考えるような思考回路の方はいらっしゃらないかと思います。
今年の7~9月期のGDPの増加を牽引した一因として、個人消費の増加がみられる(そもそも日本のGDPのおよそ6割を個人消費が占めているのだが)。だがこの期間の個人消費の増加は、好景気によるものではなく、明らかに消費税の増税に対する駆け込み需要が押し上げた形となっている。
今回の駆け込み需要に対する試算はおよそ0.9兆円と前回の増税時の4割程度に収まり、反動も小さいなどと楽観視されているが、GDPの成長から見れば十分な押し上げ要因となったことだろう。

それにしても、駆け込み需要がわずか0.9兆円ですか。米国のサイバーマンデーでの売上高はわずか1日で1兆円、独身の日のアリババの1日の売上高が4兆円を超えているというのに、なんとも寂しいことですね。


誰もが分かっているように 消費税の増税が影響ないなんてことはあり得ません。消費者は全力でトイレットペーパーなどの日用品を買いだめしました。中には誤って軽減税率の対象になる食品を買いだめする方もいらっしゃったようですが、ちゃんと駆け込み需要はあったのです。
ではなぜ、金額の規模が小さくなったのか。それは単純に日本人の購買力が下がってきているからに過ぎません。
日本人の年収はここ数年、少しずつ回復してきているとは言うものの、実質的な手取り収入で言えば、ここ数年はほぼ横ばい。

額面年収700万円の家庭から見れば、消費税が5%⇒8%に上がった2014年度の手取り収入が539万円に対して、2019年の概算は537万円。5年で成長するどころか2万円の減少となっている。
それだけではなく、ここ数年は商品の値段を変えることなく内容量を減らしたり、リニューアルと称して前回の税込金額を税抜金額に変えて、消費税分の値上げをするなどといった『サイレント値上げ』や『ステルス値上げ』、収縮を意味する(shrink)とインフレーションを掛け合わせた『シュリンクフレーション』とも呼ばれる行為が横行している。
手取りが減っているのにインフレが発生している、スタグフレーションのような現状では、国民は駆け込み需要で駆け込むだけの体力も無いのです。

つまり、日本経済は全く底堅さなどは無く、将来どうなるかは分からないとは言え、先細りの将来性しか見えないのである。
日経平均の上昇にしても、米国の株価指標の好調さに牽引されて上昇しているだけですし、11月の最終週には海外投資家が買い越しに転じたというのも、例えば米国だと感謝祭からホリデーシーズンが始まり、時間を持て余した投資家達が、今年の好調な株式市場で儲けた莫大な資金を武器に『東証カジノ』へ遊びに来ただけかもしれません。
現在、2万3,000円台半ばの日経平均が、来年度中に3万円まで上昇すると言うのはあまりに楽観的過ぎるのではないかと思います。今の株価水準からおよそ30%も上昇する必要があるので、さすがに先細りの日経平均株価が来年度中に3万円を超えるというのは難しいんじゃないかなと思います。
米国経済も好調とはいえ、それほど楽観視できる状況ではないと言えますが、米国経済次第で振り回される日本経済はそれに輪をかけて楽観視などできるはずもありません。
もちろん、私は将来を正確に見通すことができませんので、日経平均の成長を信じている投資家たちは、日本株への投資を継続させるのが正しい市場との向き合い方だとは思いますけどね。
私は日本株の未来より、米国株の未来の方が明るく、いざと言う時でもダメージは小さくて済むと考えています。
悲しいことに、今回のGDPの上方修正は、ショボいとは言え駆け込み需要の影響が大きく、日本経済が復活するきっかけは今のところ皆無と言ってしまっても過言ではないでしょう。