米・マスターカード(MA)は、先日発表されたインターブランドによるブランド価値評価ランキング「Best Global Brands 2019」で、ブランド価値成長率1位となりました。
Forbes JAPANが同社のブランドマーケティングを牽引するラジャ・ラジャマナールCMOを直撃したインタビュー記事がとても興味深かったです。

ラジャ氏がCMOに就任したのは2013年。マスターカードの株価の上昇を見ていると、ラジャ氏のマーケティング力の高さと有効性が一目で分かります。

2013年初めの頃のマスターカードの株価は50ドル前後。市場環境の良さもありますが、6年足らずで同社の企業価値を5.7倍ほどまで成長させたことになります。
そんなラジャ氏のマーケティングのキーワードは『カードブランドから、ライフスタイルブランドへの転換』というものだそうです。マスターカードが1997年から推し進めている『プライスレス』というコンセプトに基づき、ユーザーにプライスレスな体験をしてもらうことに重きをおくマーケティングに力を入れました。
食べるだけでなく、見て楽しむことができる『プライスレスレストラン』や、夜中のミュージアムを貸し切って鑑賞することができる『プライスレスシティーズ』など、マスターカードユーザーになることで人生でなかなか経験することができない『プライスレス』な体験をすることができるというのがラジャ氏が推進するマーケティングです。
もちろん、他のクレジットカードブランドや決済ブランドも特別なサービスの提供をしていますが、マスターカードのそれは一線を画するものだと言えるのではないでしょうか。
ラジャ氏は、マスターカードを決済ブランド企業ではなく、ライフスタイルに根付いた企業として成長させたいということです。ラジャ氏の中では、マスターカードはもはやハイテク企業ではなく、生活必需品企業ということになります。
マスターカードは、アマゾン・ドット・コム(AMZN)やアップル(AAPL)が発行するクレジットカードと独占で提携しており、高級志向なプライスレス体験だけでなく、一般消費者向けの生活に根付いていくというスタイルも確立しています。悔しいですが成長度合いで言えば、業界トップのビザ(V)よりもはるかに上と言ってしまって過言ではないでしょう。
マスターカードはもともと北欧を中心に決済ネットワークに強みを持っており、ヨーロッパへ旅行に行く時はいつも念のためにVISAとマスターを両方持っていくようにしていましたが、実際にはVISAもマスターもどちらも使えるお店と言うのがほとんどで、決済ネットワークの優位性はどちらにあるのかよく分からない状態でした。
実際、決済額や利用率ではVISAの方が上だが、決済できる店舗数で見ると若干、マスターカードの方が上らしく、 公式サイトやCMで「世界で最も多くの場所で使えるMastercard」と公言しています。
投資家としても、ビザとマスターカードのどちらの株を保有するかというのは私の中で何度か議題に上がったものです。
成長率や株価上昇率では圧倒的にマスターカードの方が上で、(といってもビザも驚異的な伸び率ですが)私が投資を始めてからのリターンでも、ビザ<マスターカードとなっています。あと、個人的に評価が高いのは、マスターカードが計算する為替レートの方がビザより有利と言う点ですね。海外旅行や海外でのショッピングではマスターカードの方がお得かもしれません。
ただ、ビザはオリンピックの公式スポンサーとして、チケット購入や会場での利用はVISAブランドのクレジットカードしか利用できないという優位性や、キャッシュレス決済の『VISAタッチ』の好調さ、そして何より、圧倒的なシェアの高さを見れば、ビザを売り払うという選択肢はありません。
実際、どちらが良いかというよりは、どっちも持っておくのが良いんじゃないかなとずっと考えています。タバコ銘柄でもフィリップモリス(PM)とアルトリア(MO)のどちらも持っている個人投資家の方も少なくないですからね。ちょっと意味合いが違うかもしれませんが。
私の配当金戦略としても毎月の配当収入を安定させるのにマスターカードはうってつけです。

ただ、『株価が高い』ことだけがネックなのです。今から新規投資するにはかなりの勇気が必要です。もちろん、これからもっと成長を続けるとは考えていますが、景気に影響されやすい決済ネットワークの株を好景気の終盤とも思える今の時期に買い付けるのはどうか?と考えるんですよね。
仮想通貨などがもっと決済手段として活用できるレベルになれば、恐らく影響は大きいでしょうしね。
などと言っていると、なかなか投資をする機会なんて出てこないのですが、キャッシュ比率が大幅に高まっている今、マスターカードはチャンスがあれば投資したいと考えている企業の一つです。
マスターカードの有するブランド力とマーケティング力は、まさに『お金で買えない価値がある』を体現してくれているものだと私は考えています。