ウォールストリートジャーナル(WSJ)の報道によると、米マクドナルドのスティーブ・イースタンブルック氏が従業員との『合意上の性的関係』が問題となってCEOを解任されたとのことです。
現在52歳のイースタンブルック氏は2015年から同社のCEOに着任しており、この期間で株価はおよそ倍にまで急成長したことから彼が名君だったことはうかがえるのではないでしょうか。

いや〜…そんな彼がまさかこのようなスキャンダルで退任となるとは、『英雄色を好む』と言うやつなんですかね。私はこの言葉をクズな男が言い訳に使っている以外では耳にしたことがないですが。
とは言え、このニュースはあまり悲観的に捉えるべきではないのかもしれません。ポジティブに捉えるならば、わずか4年でマクドナルドの窮地を救い、株価を2倍にまで成長させた名君でもこのようなスキャンダルひとつですぐにクビになると言うことは、それだけ同社の取締役会がちゃんと機能していると言うことです。
アマゾン・ドット・コム(AMZN)のジェフ・ベゾス氏も自身の不倫から離婚問題にまで発展し、元奥さんに持ち株の4分の1を分配しましたが、今でも彼は同社のCEOを務めています。彼の場合は創業者であり、圧倒的に力のある立場ですので、比較しづらい面もありますが、米マクドナルドは権力がCEOに集中することなく、しっかりとバランスが取れていると言うことが言えるでしょう。
また、マクドナルドはブランドイメージ、とりわけメインターゲットとなるであろうファミリー層へのイメージ戦略をとても大切にしているために、今回のような電光石火の解任劇となったのでしょう。
つまり今回の一件で、マクドナルドは巨大企業の傲りなどなく、マクドナルドの進むべき道、大切な要素をしっかりと理解し、組織全体がまともに機能していると捉えることができるのです。
となると、気になるのが後任のCEOについてです。どれほど素晴らしいブランド力を持つ企業でもCEO次第で苦戦したり、ブランドイメージが悪化することがあると言うのは、以前も記事にした通りです。


後任は、マクドナルドUS(MCDとは別会社)のCEOであるクリス・ケンプチンスキー氏が内定しており、彼はイースタンブルック氏のもとで、マクドナルドのバーガーを『無添加』のものに転換したり、カフェメニューを充実させたりして、同社の製品を安心安全かつ、リピートしていただけるようなイメージ作りに尽力してきた人物です。

まだ、表立った実績はそれほどないので、楽観的すぎるのもどうかとは思いますが、少なくとも米国本土のマクドナルドでCEOを務めていた人物ですし、従業員と”I’m lovin’ it”しているようなイースタンブルック氏よりは適任なのかもしれません。
ただ、イースタンブルック氏のCEO時代が好調すぎたため、相当ハードルは高いものになるだろうと思います。
対照的な例として、マイクロソフト(MSFT)が挙げられます。マイクロソフトの現在のCEOであるサティア・ナデラ氏は同社を『ただのソフトウェア屋』からサブスクリプションとクラウドを収益の柱とするビジネスモデルに展開した非常に優れたCEOですが、それもやはり前任のスティーブ・バルマー氏が”無能”と言う烙印を押されていたためでしょう。私が同社に投資を始めたのも2014年にCEOが交代すると言うニュースを聞いたためでした。
同じスティーブでも無能だったバルマー氏から引き継いだ形のマイクロソフトとは違い、イースタンブルック氏はCEOとして決して無能だった訳ではありません。そう考えると、交代直後に積極的に投資を進めていくよりは、クリス・ケンプチンスキー氏のCEOとしての手腕が見えてきた頃に追加投資してもいいかなとも思います。今回の件でめちゃくちゃ大きく株価が下がるようであれば少額投資をしたいとも思いますけどね。
もちろん前任が優秀だったからと言って後任が無能とは限りません。クリス・ケンプチンスキー氏と同じように『有能なスティーブ』であるスティーブ・ジョブズ氏からアップル(AAPL)を引き継いだティム・クック氏は色々な批判を受け、前任のジョブズ氏と比較されながらも、同社の株価を史上最高値まで引き上げ、時価総額世界一の座を守っています。

結局、根本的に大切なのは、その企業の製品が人々に愛されているか、他社に負けないブランド力はあるか。と言う点に尽きると思いますので、今日も世界一有名なマクドナルドのハンバーガーが世界中で大量に消費されている限り、同社株は長期的には買いと言う方向で良いのではないでしょうか。