先月31日発表されたアルトリアの決算によると、電子たばこメーカー『ジュール・ラブズ』への投資に絡み45億ドル(約4,860億円)の損失を計上したと発表。第3四半期の純損失は26億ドル(EPS▲1.39ドル)となった。前年同期は19.4億ドル(EPS1.03ドル)の黒字だった。
アルトリアは昨年、急成長中だったジュール・ラブズの発行済株式の35%を取得しており、同社の収益性の向上に一役買う存在となるはずだった。だが、今年の夏に同社の製品を愛用していたと見られる10代の若者が次々と重篤な肺疾患を患い、死者まで出る騒動となったことから、FDAが規制強化に乗り出し、トランプ大統領が香り付きタバコの禁止を自ら表明するまでの事態となりました。

この結果を受けて、同社株は久々に大きく下落。約2週間ぶりに45ドルを割る水準まで株価は下落しました。

くしくも同日、日本のタバコ銘柄であるJT(2914)も決算発表をしており、最終利益予想を3,600億円から3,400億円に6%弱の下方修正をし、さらには売上営業利益率は前年同期の29.1%→22.5%に低下した。
JTの決算説明資料には、『為替の不利な影響により減益』とあるが、私は以前勤めていた企業の決算を担当していた時に、日本企業が赤字や減益を計上してしまった時は、『為替の影響』として責任転嫁しがちだと言うことを学んだため、あまり信用しないことにしています。まあ、それでも為替一定ベースでは調整後営業利益は微増しているし、為替さえなければ…と言いたくなる気持ちもわかりますけどね。
それはさておき、アルトリアの方はどうだろうか。四半期決算とは言え、最終赤字になったと言うのは相当なマイナスインパクトに捉えられるだろう。ですが、私はアルトリア株へ投資している投資家であればむしろ、また買い時がきたと捉えた方が良いのではないかと思います。
ジュール・ラブズの減損の件がなければ第3四半期の決算は売上高54.1億ドル、EPSは1.19ドルと共に予想を超える数値だった上に、ジュール・ラブズの減損自体もさっさと認めて減損してしまったことは非常に好感が持てます。こういうマイナス影響でもビジネスライクに判断し、即座に対応してくれるあたりは、米国株の隠れた大きなメリットだと思います。
それに減損損失は一時的なものですので、あくまで『本業』に影響がないのであれば、安くなったところを買い増しすると言う姿勢で良いのではないでしょうか。
かのウォーレン・バフェット氏がアメリカン・エキスプレス(AXP)株を取得するに至った『サラダオイル事件』からも同様のことが学べます。
サラダオイル事件とは、1960年代にアメリカン・エキスプレスを襲ったスキャンダルで、とある企業がサラダオイルを担保にして6,000万ドルを借りていました。このお金を融資していたのがアメリカン・エキスプレス社の子会社だったのですが、実は担保となるはずのサラダオイルは存在せず、貸付先が破綻。6,000万ドルはまるまるアメリカン・エキスプレス社の貸倒損失となったと言うものです。当時のアメックスの企業規模に対して6,000万ドルの損失はあまりに大きかったため、アメリカン・エキスプレス株は大暴落し、倒産するのではないかという事態に。スキャンダルによってイメージも大きく悪化しました。
そんな中、バフェット氏は近所のレストランに行き、一日中レジをチェックしました。すると巨額の損失を被ったアメックスのクレジットカードを使って人々が料金の支払いをしていることを発見しました。これを見たバフェット氏は「アメックスのブランドはまだ健在だ」と考え、アメリカン・エキスプレス株を買うこととしたのである。そしてその後、同社の株価は大きく上昇。バフェット氏の成功体験の一つとして語られています。
今回もJUULの件で大きくイメージが悪化したアルトリア株ですが、それでもジュールのタバコフレーバーの製品は引き続き販売が継続されていますし、そもそも、この程度のことで悪化すると言うほど同社に対するイメージは良くありません。なら、タバコ株と「マルボロのブランドはまだ健在だ」と信じる投資家には、再び投資のチャンスが訪れたと言うことでしょう。
私はタバコ株の将来をそこまで楽観的には見れないし、自分自身がタバコ嫌いなのもあって投資するには至っていません。ですが、数字をみる限り、事業の安定性は否定のしようはありません。喫煙者人口は確実に減ってはいますが、それでも強気の値上げで対応できると言うのは素晴らしいことだと思います。
タバコこそ、貧乏人からキャッシュを巻き上げるために資本家によって生み出されたキャッシュマシーンなのですから。