米電子たばこ大手ジュール・ラブズは中国で製品を発売したがわずか数日で販売が打ち切られたとのことだ。
先週、ジュールの電子たばことミント、マンゴー、クリーム、バージニアたばこ風味などの詰め替え溶液が中国の京東商城(JDドット・コム)とアリババグループの通販サイトから発売された。だがジュール製品は週末までにサイト上から姿を消したとのこと。複数の関係者によると、ジュールは事態に困惑している。
ジュールは米国内では、十代の若者に電子たばこの利用が広がったとして、トランプ政権が風味つきの電子たばこの販売禁止措置が進んでいる。

そのため、ジュール・ラブズのケビン・バーンズCEOによると、ジュール・ラブズは喫煙率の高いアジアを重視し始めていたところだ。世界保健機関(WHO)によれば、中国の喫煙者数は3億人を超える。男性の喫煙率は59%を誇るという。
また、8月末には人口世界2位のインドでも電子タバコの販売そのものが禁止され、刑事罰に科せられる可能性があるという報道されていたが、ついにインドでも電子タバコの生産、販売、輸入が禁止されるという発表があった。

同社はアジアを重視するという方向性のようだが、人口世界一の中国と世界二位のインドで電子タバコが規制されるということは今後の見通しがかなり厳しいことを表しているだろうことがわかります。
同社の株式の35%を取得したアルトリア(MO)の株価も依然として冴えない。

配当利回りは先日ついに8%を超えたのだが、それ以降もズルズルと株価は下がり、一時的に39ドル台まで株価は下落。今も株価は40ドル台ギリギリ、配当利回りも8.23%まで上昇した。配当利回り8%という高配当に釣られて同社株を買い増しした投資家も多いようだが、9/12には株価が45ドル付近だったため、たった一週間ほどで株価は10%近く下落。先週同社に投資した投資家が、すでに年間の配当金だけでは損失を埋められない状況になっていることがわかる。まあ、いつも言っているように短期の株価の上下には何の意味も持たないとは言えるのですが。
では、タバコ株には投資冥利がないのかと言われると、どちらとも言えないです。私自身、タバコ株には投資していないにも関わらず、タバコが嫌いということでかなり叩いていますし、タバコ自体が世間に嫌われているためにタバコ株も批判の対象になりがちです。
とは言え、各国ともにタバコを完全には規制することはできません。今回、インドと中国が立て続けに規制をかけたのは電子タバコであるが、なぜ電子タバコだけ規制の対象にしたのだろう?と不思議に思いませんでしたか?本気でタバコを規制するつもりなら真っ先に紙巻きタバコを規制するはずですよね。ここで、あるデータを見てもらいたい。

これは、『あるもの』の2017年度の国別生産量ランキングである。中国が2百万トン越えと圧倒的ではあるが、今回話題に上がっているインドや米国も生産量の上位国となっている。みなさん、もうお分かりですね。この『あるもの』こそ、『紙巻きタバコ』なのである。
紙巻きタバコの消費量だけでなく、生産量でも上位国である中国、インド、そして米国は、電子タバコがあまりに普及しすぎると過去の紙巻き式のタバコが売れなくなるという危機感を募らせたために電子タバコだけを規制の対象にしたのではないか?とも捉えられます。
タバコ税は政府にとって大切な税収である上に、増税しても反発を受けるどころか、嫌煙家からはもっと課税しろ!と応援を受けることができるほど都合がいい収入源なのです。つまりは、各国政府からすれば、喫煙習慣のある愚かな国民の健康状況などどうでもよく、タバコをどれだけ規制しようとも完全に根絶やしするわけにはいかないというのが本心ではないでしょうか。
政府とタバコ会社は切っても切れない事情があり、今後も細々とタバコ産業は消えることなくタバコ会社も法の規制の隙間をかいくぐりながら、増収増益を続ける可能性も大いにあると言えるでしょう。
つまりは、みんなから叩かれて嫌われているタイミングでも同社の業績の好調さをもとに、将来性を信じて愚直に投資を続けた投資家こそが、本当のバリュー投資家であり大きなリターンを得ることができる投資家と言えるのかもしれません。バリュー投資とは本来、市場から嫌われて見向きもされないが、業績は良好で将来株価が復活するだろうと見られる優良株に投資するという手法なのです。まさに今のタバコ株がその状況ではあります。
しかし、事実として現在のところタバコ株は市場全体から嫌われており、業績も良好ではありますが、タバコの未来が明るいかというと決してそうは思えない。タバコは30年前より確実に社会から迫害されており、今の20代の喫煙率が相当下がっていることから、今後30年間で喫煙習慣のある成人が今よりさらに減少するだろうと見ています。30年後にはもはやニッチな需要となったタバコ事業が今と同じ安定的なキャッシュフローを生み出すためには、いったいどれだけ値上げをする必要があるのでしょうか?少なくとも、日本でも今の2倍くらい、1箱1,000円以上にはなるでしょうね。それでもバカはタバコを買い続けるのでしょうが。
そう考えると、少なくとも我々世代が現役の間、あと30年近くはタバコ事業は安泰と言えるのでしょうか。うーん…難しいところですね。これ以上なんの規制もなければ問題ないのでしょうが、前述のように各国の思惑があるのか定かではありませんが、米国や中国、インドというこれからの世界経済を引っ張っていく経済大国が相次いで電子タバコを規制したことから、世界中でさらに規制が厳しくなる方向であることは間違いありません。
もうすぐアルトリア株は1株30ドル台に突入しそうな勢いですが、私には未来を見通せる能力はありませんので、タバコの将来について自信を持つことができません。私はタバコ事業を信じることができませんので、まだ同社を投資対象としてみることはできませんが、グレアム氏やバフェット氏のバリュー株の原則に則って、PBRが1.2倍程度まで下がれば投資してみてもいいかな。ちなみにPBR1.2倍は同社の株価が9.47ドルですから、そこまで下落することはまずあり得ないでしょうけどね 笑