アルトリア(MO)傘下、ジュール・ラブズの電子タバコである『JUUL』のリスクが紙巻きたばこより低いとの主張を、FDAの承認を得ずにマーケティング活動で使用したとして、FDAは9日付の書簡でジュールに警告した。

FDAによると、ジュール・ラブズが自社の電子たばこ製品について、従来型のたばこより安全だとする無許可の説明を子どもの前で行ったと指摘したとのこと。プレゼンテーションを聞いていた高校生の証言によると、ジュールの代表者は、同社の電子たばこである『JUUL』が「たばこより99%安全」だと語ったと言うことです。
そもそも『JUUL』とは、現在米国のティーンエージャーの間で流行している電子タバコのことで、マンゴーやバニラ、カプチーノなど、若者が好きそうな色んな種類のフレーバーがある一方で、しっかりとニコチンが含有されているため、ほぼタバコと同義のものと言える。
当然ですがニコチンが含まれている以上、安全などということは全く無く、恐らく同社の製品を利用したであろう若年層の間で重篤な肺疾患が広まっており、すでに死者も数名出ている状態です。

以前から私は、FDAのJUULに対する規制は厳しくなるだろうと発言していましたが、今回の件を踏まえて、今後もっと監視の目が厳しくなるのは間違いないだろうと思います。
もちろん、タバコを吸うのは個人の勝手で究極の自己責任、喫煙者は生きている限り資本家に搾り取られ続ける運命にあります。ですが、いくら喫煙者が世界的に減少していると言っても、未成年相手に半ば騙すような形のプレゼンを行うというのは、印象が悪いですね。
そもそも米国では従来型の紙巻きたばこについてはTV、ラジオなどのマスメディアのみならず、看板、SNSなどあらゆる手段を使った宣伝が禁止されている。それに対して、電子タバコの宣伝をめぐる規制は少なく、本来は電子タバコも含めて規制をかけるべきだと私は思います。今後、電子タバコも従来型のタバコと同様に広告に規制がかかるという可能性は大いにありえます。
対して、投資家としての観点からタバコ株を見てみましょう。米国版の『Yahoo Finance』でアルトリアを見てみると、やはり圧倒的な利益率であることが分かります。製造業でありながら、2018年度には、営業利益率は50.1%(営業利益(Operating Income or loss) 9,834,000/総売上(Total Revenue) 19,627,000×100(%))と圧倒的な利益率を叩き出しています。そしてその営業利益率の高さの原因の一つが、実は前述の通り宣伝が禁止されているからなのです。
同社の販管費(Selling General and Administrative)を見てみると、2,342,000となっており、売上高に占める販管費率が11.9%(販管費(Selling General and Administrative)2,342,000/総売上(Total Revenue) 19,627,000×100(%))であることがわかります。これがどれほど低いのかというと、同じ生活必需品セクターであるプロクター・アンド・ギャンブル(PG)の直近の同数値が28.2%(販管費:19,131,000/総売上:67,684,000)、コカ・コーラ(KO)の直近の同数値が33.1%(販管費:10,561,000/総売上:31,856,000)であることを考えると、圧倒的な低さであることがわかります。
実は大半の企業で、販管費の内訳で、広告宣伝費が人件費に次いで大きなコストになりがちです。当然、広告の力によって自社製品を広めて、ブランド力を高めていくのですから当然ですよね。普通の企業なら広告には莫大なお金をかける。私がブログを通じてアドセンス収入を得ることができるのも、人気YoutuberのHIKAKINさんが年収12億円と言われるほどの収入を得られるのも、結局は企業が広告に力を入れているからですよね。企業が広告を出さなければ、そもそもYoutuberなんて職業は成り立ちません。
タバコ企業はその莫大なコストである広告宣伝費が一切かからないのです。禁止されていますからね。それでもタバコは中毒性が高いのでリピーターがどんどん消費してくれる。一度マルボロを吸い始めた喫煙者は高確率で次もマルボロを買っていくでしょう。そもそもタバコ事業自体が、バカな消費者を中毒にして依存させ、抜けさせなくすることで高いリピート率と安定した売上を叩き出すビジネスモデルなのです。目を引くようなキャッチーな広告なんて元々必要としないのです。
それに、米国内では他のタバコメーカーも同じように広告を出すことができませんから、シェアが変動することもありません。ちなみにですが、タバコの広告は日本でも禁止されています。宣伝しなくても売れるし、値上げをしても売れる。それがタバコという商品なんですね。恐ろしい。
ですので、ジュール・ラブズも子供相手にギリギリアウトな宣伝をするよりもバカが食いつくのをじっと待ってる方がはるかに収益性が高いです。FDAに目をつけられて良いことは一つもないですしね。
喫煙習慣を持つつもりなどなかったかもしれない未成年を巻き込むやり方はどうか辞めていただきたいものです。