先日、利下げが行われると何故株価が上昇するのかということについて記事をまとめましたが、説明がヘタで分かりづらいところがありましたので、PERについて今回は改めて記事にしてみようと思いました。
PERってなーに?
まずはじめに、PERとは何なのか?という話ですが、PERは、日本語では株価収益率と言い株価が割安か否かを判断する指標になります。PERは◯◯倍という数値で表され、今の株価が利益の何倍かというのを表しています。PERは以下の数式で求めることができます。
PER=株価/1株あたり利益(EPS)
例えば、株価が現在100ドルのA社という会社があるとします。そのA社の今期の1株あたりの利益(EPS)が5ドルだとします。すると、A社のPERは、
PER=100ドル(株価)/5ドル(EPS)=20倍
となります。では、なぜPERが株価が割安か否かの目安になるのでしょうか。 それは、簡潔に言えばこのPERの数値がそのまま投資元本を回収するのに何年かかるかということを表しているからです。
わかりやすくするために、あなたは今からA社をまるごと買収したと考えてください。 A社の発行株式は100ドルの株1株だけだとします。つまり、あなたは100ドルで会社を買収しました。そしてその会社は1年間で5ドルの収益を生み出します。計算を簡略化するために、毎年5ドルの収益を上げ続けると仮定した場合、投資した100ドルを回収するのにかかる期間は何年でしょうか?
毎年5ドルの収益を上げてくれるのですから、100ドル稼ぐには20年かかることになることがわかります。つまり、言い換えれば、PER20倍の会社=20年で投資元本を稼げるということになります。 では次は、毎年5ドルの収益を上げるA社の株価が50ドルに下がったタイミングで投資したと仮定します。すると、A社のPERは、
PER=50ドル(株価)/5ドル(EPS)=10倍
となり、10年で投資元本を回収することが出来ることになります。 このことから、PERが低い=投資元本を回収するスピードが早いとなるため、PERが低い方がお買い得だね!と言うことになるのです。
株のリターンとPERの関係
では次に、株のリターンとPERの関係性についてお話します。 以前、記事には
株のリターン=1/PER
とだけ記載しましたが、もう少し詳しく説明しますね。 先ほど、PERが20倍の株は投資元本を回収するのに20年かかると言いました。 では、逆に考えましょう。投資元本を回収するのに20年かかるということは、年利回り(リターン)は何パーセントになるでしょうか? 先ほどの例で言うと、PER20倍の場合は、毎年5ドルの収益を上げ続けるA社株を100ドルで買った時の年間の利回りを求めれば良いので、計算式は以下の通りになります。
年利回り(リターン)=5ドル(EPS)/100ドル(株価)=0.05=5%
つまり、PER20倍の銘柄を買うということは、その株に年利5%のリターンを期待しているということが言えます。 さて、この数式を見て、何かお気づきになりませんか? そう、年利回り(リターン)を求める数式は、PERを求める数式と分母と分子が入れ替わっているだけなのです。
・年利回り(リターン)=1株当たり利益(EPS)/株価
・PER=株価/1株当たり利益(EPS)
ここで、小学生に戻ったつもりで分数の掛け算を思い出してほしいのですが、分母と分子が入れ替わっている分数同士を掛け算すると1になりますよね。このことから、以下の数式が成り立つことがわかります。
PER×年利回り(リターン)=1
ここまで理解していただければ、もう少しです。もう一度、小学生に戻ったつもりで掛け算の穴埋め問題をしてみましょう。
4×?=12
?に入る数字は何でしょう? この程度の数式であれば暗算で『3』と答えられますが、?を求める式は以下の通りです。
?=12÷4=3
これを先ほどのPERとリターンの数式に当てはめてみると、
PER×年利回り(リターン)=1
⇓
PER×?=1
⇓
?=1÷PER
⇓
年利回り(リターン)=1/PER
と、始めに提示した数式が成り立つことが分かりますね。 このことから、株のリターンとPERは表裏一体となっており、株のリターンとPERはお互いを掛けて1になるという関係にあるということが分かります。
成長株のPERが高くなる理由
世の中には信じられないくらいの高PERになっている株が存在します。成長株として株価が上昇し続けたアマゾン・ドット・コム(AMZN)やネットフリックス(NFLX)はPERが100倍を超えています。PERが100倍ということは投資資金を回収するのに100年かかる計算となり、株のリターンは1%未満ということになります。 では、なぜそのような高PERになるまで株価は上昇するのでしょうか。その理由も数式に当てはめれば理解できます。何度も言うようにPERとは
PER=株価/1株当たり利益(EPS)
という数式で求められます。PERがこの数式で求められる以上、PERが変動する要因は株価とEPSの2つしかありません。 先ほどは、株価が下落したことでPERが下がるという例を紹介しましたが、当然、EPSが上昇することでもPERは下落します。 株価が100ドルの時にEPSが5ドルの株に投資をすれば PERは100ドル/5ドル=20倍となりますが、EPSが10ドルに成長すれば、 PERは100ドル/10ドル=10倍にまで成長します。
一般的に成長株と呼ばれる株は平気で毎年25%~40%程度の成長率を誇ります。 例えば、株価が100ドルでEPSが1ドル(PER100倍)の株があったとしても、5年の間、平均40%の成長をすれば、5年後のEPSは約5.38ドルとなります。 100ドルで投資しているので、5年後のPERは
PER=100ドル/5.38ドル(EPS)=18.58倍
と割高な水準ではなくなるということです。また、現実的ではありませんが、毎年40%の成長を続けた場合、投資時点でPER100倍の銘柄であっても11年でほぼ元本を回収できることになります。
毎年40%の成長を続けた場合のEPSの推移(投資時点の株価は100ドル、EPSは1ドルとする)
つまり、成長株は未来の成長性を考慮して、高いPERが正当化されていると言えます。そのため、期待通りの成長を見せている限りはPERはどんどん高くなります。逆に、成長性に陰りが見えると一気に叩き売られて暴落することになるのです。成長株のボラティリティが大きくなるのは期待先行感が大きすぎてPERが異常値になることが原因なのです。
まとめ
PERは、はじめに申し上げたように株価が割安か否かを判断する指標になります。しかし、PERはそれ単体では割安度を測ることが出来ません。成長しているITセクターと景気循環株の金融セクターのPERが同じであるはずがありません。同業他社とのPERの比較をしたり、EPSの伸び率を見て今の株価から将来のPERを算出したり、現在のノーリスク資産の利回りを踏まえて株のリスクの大きさを計算してみたりするのに活用できるのがPERです。PERが10倍だから割安なので買った!PERが30倍なので割高だと思い見送った!という判断だけでは思わぬ損失(機会損失)を被るかもしれません。PERは活用して初めて意味のある指標だということを覚えておいてください。